未払い割増賃金の請求

残業代・休日手当・深夜手当などは,割増賃金と呼ばれています。

ここでは,未払い割増賃金の請求方法についてご説明いたします!

固定残業代・定額残業代とは?

未払い残業代等請求をするに当たって争いとなる問題として,固定残業代(定額残業代)の問題があります。ここでは,この固定残業代・定額残業代とは何かについて考えます。

固定残業代・定額残業代とは

未払い残業代等を請求する場合,使用者側からなされる反論にはさまざまなものがありますが,その中でも特に多いのが,固定残業代(定額残業代)の主張です。

固定残業代・定額残業代とは,あらかじめ一定時間分の時間外労働に対する割増賃金(残業代)分を支払っておくという方法のことをいいます。

例えば,25万円の給料が支払われていたとして,そのうちの20万円は基本給であるが,その残りの5万円はそもそも残業代として支払われていたものである,というような主張のことです。

同じことは,休日手当や深夜手当においてもありうるでしょう。固定休日手当とか定額深夜手当のようなものもありうるということです。

固定残業代・定額残業代は認められるか

固定残業代・定額残業代も,まったく違法無効というわけではありません。

労働者にとっても,固定残業代があることにより,実際は固定残業代に相当する時間分の残業をしていなかったとしても,支給が約束されている固定部分についてはもらうことができるので,デメリットばかりではないからです。

例えば,前記の例で,固定残業代5万円とは月に40時間の残業分であるという場合に,実際にはある月にまったく残業をしていなかったとしても,その5万円はもらうことができるというメリットがあるということです。

しかし,実際には,残業代を支払わないための方策として利用されているのが現状です。固定残業代・定額残業代の制度を採用していることを理由に,時間外労働をさせておきながら残業代を支払わない場合が少なくありません。

この固定残業代の制度は,何も知らない労働者を酷使するなど,労働者に過重労働を生じさせる危険性があります。

そのため,固定残業代・定額残業代の制度を導入することは違法ではありませんが,実際の時間外労働に対する割増賃金の金額が,固定・定額残業代を超えるときは,賃金の全額払いの原則に従い,その超過部分の支払いを請求することができるとされています。

例えば,上記の例でいうと,ある月に50時間の残業をして,その残業代の金額は正しく計算すると7万円であったという場合,固定・定額残業代として毎月5万円が支払われていたとしても,差額の2万円は未払いであるとして,使用者に対してその支払いを請求することができるということです。

固定残業代・定額残業代制度自体の有効性

前記のとおり,固定残業代・定額残業代の制度を導入することは許されます。しかし,だからといって,常にその固定残業代・定額残業代の制度が有効とされるわけではありません。

この制度は,賃金に関わる重要な問題です。労働者からしてみれば,後になって突然,実は残業代が含まれていたんだなどと言われても納得できないでしょう。

そのため,固定残業代・定額残業代の制度が有効というためには,あらかじめ就業規則に定めてそれを労働者に伝えておくか,個別の労働契約を締結しておくことが必要でしょう。

また,固定・定額部分が妥当な金額といえるかどうかを判断するためには,基本給の部分がいくらなのかということが分からなければなりません。したがって,基本給部分と固定・定額残業代の部分が明確に区別されていることが必要となってきます。

さらに,前記のとおり,実際の割増賃金が固定・定額分を超える場合にはその差額を請求できます。したがって, 固定部分を超える残業等をした場合には差額をきちんと支払うということ も就業規則や労働契約で定めておかなければなりません。

裁判例 (東京高判昭和62年11月30日等。)においても,固定残業代・定額残業代の有効性について,同様に解するものがあります。

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