割増賃金

未払い割増賃金の請求

月給制の場合に割増賃金はどのように計算するのか?

未払い残業代・残業手当・深夜手当・休日手当などの割増賃金を請求するためには,まず,請求すべき未払いの割増賃金の金額がいくらになるのかを計算する必要がありますが,月給制の場合には月給制特有の計算方法も必要となってきます。ここでは,月給制の場合の割増賃金の計算の方法・手順について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

割増賃金の計算式

労働基準法上,使用者は,労働者時間外労働をした場合,法定休日労働をした場合,深夜労働をした場合に,それぞれ基礎賃金を一定の割合で割り増しをした割増賃金(いわゆる残業代休日手当深夜手当)を支払わなければならないとされていますが,その計算方法は意外と複雑です。

また,給与形態が月給制なのか日給制なのかによっても,割増賃金の計算方法が異なってきます。

そこで,以下の具体例に沿って,月給制の場合の割増賃金の計算方法と手順についてご説明いたします。

  • 給与支給:毎月20日締め当月25日払い
  • 基本給:30万0000円
  • 家族手当:同居家族1人につき1万0000円で,同居家族が3人なので3万0000円
  • 営業手当:3万0000円
  • 固定残業代:3万0000円
  • 通勤手当:1か月の定期代の実費支給で1万0000円
  • 休日:土日・祝日・年始4日・年末5日・夏季5日(仮に合計120日とします。)
  • 年間日数:うるう年ではない365日とします。
  • 所定労働時間:午前9時から午後18時まで休憩1時間を除く1日8時間

>> 割増賃金の計算方法と手順(基本)

1 所定賃金の確認

残業代など割増賃金を算定するためには,まずその計算の基礎となる賃金(基礎賃金)を算出しておかなければなりませんが,その基礎賃金算出の基本となるのは,雇用・労働契約で定められている所定賃金です。

したがって,まずは,労働・雇用契約書から,この所定賃金はいくらなのかということを確認する必要があります。前記の具体例でいえば,基本給30万0000円+家族手当3万0000円+営業手当3万0000円なので,合計36万0000円ということになります。

なお,前記具体例では,通勤手当については実費支給ですので,賃金には該当しないと考えられます。そのため,基礎賃金からは除外します(なお,実費支給ではなく一律定額支給のような場合には,賃金に該当する場合もあり得ます。)。

>> 所定賃金とは?

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2 基礎賃金の確認

前記のとおり,残業代などの割増賃金算定のためには,基礎賃金を確認しなければなりません。そこで,まずはその基本となる所定賃金を確認しなければなりませんが,だからといって,その所定賃金がそのまま基礎賃金となるわけでもありません。

法令上,一定の賃金については,割増賃金算定の基礎賃金から除外しなければならないというものもあります。これを「除外賃金」といいます。

前記具体例においては,家族手当が除外賃金に当たります。営業手当は,除外賃金には当たりませんので,これは除外されません。

また,固定残業代については,それが労働者も納得のもとに正当に定められているものであれば,やはり基礎賃金からは除外することになります(ただし,労働者の合意を得ずに勝手に決められているような場合には除外しないということもあります。)。

仮に本件では,固定残業代も正当なものであるとすれば,基礎賃金額は,基本給30万0000円+営業手当3万0000円なので,33万0000円ということになります。

>> 除外賃金とは?

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3 1時間当たりの基礎賃金の計算

残業代など割増賃金は,基本的に1分単位で計算しなければなりません。そこで,基礎賃金が分かったならば,1時間当たりの基礎賃金を算出しておく必要があります。これを60で割れば,1分単位の基礎賃金も計算が可能となります。

もっとも,その前提として,所定労働時間を算出しておく必要があります。所定労働時間とは,労働・雇用契約において定められている労働時間のことです。

月給制の場合,労働・雇用契約において毎月の所定労働時間が明確に定められているのであれば,それに従うことになるでしょう。

しかし,そのように明確に定められている場合は稀です。明確に定められていない場合には,1年間の所定労働時間数を12で割って,1月ごとの平均所定労働時間を算出しておかなければなりません。

>> 所定労働時間とは?

1年間の所定労働日数

1年間の所定労働時間数を算出するためには,まず1年間の所定労働日数を算出しておく必要があります。これは,1年の日数から所定の休日日数を差し引いて算出します。

前記具体例では,1年の日数は365日であり,休日日数は120日ですから,240日が所定労働日数ということになります。

1か月当たりの平均所定労働時間数

次に1か月当たりの平均所定労働時間数を算出することになりますが,まずは前記の1年間所定労働日数を12で割ることによって,1か月の平均所定労働日数を算出し,これに1日当たりの所定労働時間数をかけます。

そして,具体例によれば1日の所定労働時間数は8時間ですから,240日に8時間をかけることになりますので,1年間の所定労働時間数は1920時間となります。そして,これを12か月で割ると,1か月当たりの所定労働時間数は160時間ということになります。

1時間当たりの基礎賃金

月給制の場合には,1か月の基礎賃金を前記1か月当たりの所定労働時間数で割ることによって,1時間当たりの基礎賃金を算出することができます。

前記具体例によれば,基礎賃金は33万0000円を1か月当たりの平均所定労働時間数は160時間ですので,1時間当たりの基礎賃金は2062.5円ということになります。

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4 実労働時間の確認

残業代・深夜手当・休日手当は,実際に時間外労働をした時間,深夜労働をした時間,休日労働をした時間に応じて支払われることになります。そこで,これらの時間外労働・深夜労働・休日労働をした実労働時間を算出しておく必要があります。

この実労働時間は,所定労働時間ではなく,実際に労働をした時間です。これは,タイムカードなどによって算定しておく必要があるでしょう。また,労働時間数を算出する場合には,1分単位で算出しておくのが通常です。

前記具体例の場合,給与締日は毎月20日ですから,21日から翌月20日までの合計実労働時間数を算出することになります。

>> 実労働時間とは?

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5 割増賃金の算出

実労働時間まで算出したならば,あとは,1時間当たりの基礎賃金に一定の割増率を乗じ, それに実労働時間をかけるだけです。割増率については,以下を参照してください。

  • 【 1時間当たり基礎賃金 × 時間外労働時間 × 1.25 = 残業代の金額 】
  • 【 1時間当たり基礎賃金 × 深夜労働時間 × 1.25 = 深夜手当の金額 】
  • 【 1時間当たり基礎賃金 × 休日労働時間 × 1.35 = 休日手当の金額 】

※なお,大企業については,月に60時間を超える部分の時間外労働については,割増率が1.25倍ではなく,1.5倍になります。

1分単位で実労働時間を計算する場合には,1時間当たりの基礎賃金額を60で割って1分当たりの基礎賃金額を算出すればよいだけです。

前記具体例であれば,1時間当たりの基礎賃金は2062.5円ですので,これを60で割ると,34.375円となります。これを基にして,割増賃金額を計算することになります。

たとえば,1か月の時間外労働時間が,50時間23分であったとすれば,時間外割増賃金の額は12万9894.53125円となります。

ここで小数点以下が出てしまった場合の取扱いですが,実は決まった処理方法がないのが実情です。そのため,通常は,小数点以下を切り上げるか,四捨五入によって算出することになります。仮に切り上げであれば,12万9895円となります。

そして,具体例における固定残業代が正当なものであれば,上記12万9895円から固定残業代3万0000円を差し引いた金額9万9895円を請求できることになります。

>> 割増賃金の各種割増率

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