割増賃金

未払い割増賃金の請求

残業代などの未払い割増賃金請求の記事一覧

タイムカードの開示義務

未払い割増賃金請求の概要・全体像

未払いの割増賃金(残業代・休日手当・深夜手当)を請求するためには,労働基準法等の法的な知識が必要となってきます。以下では,未払い割増賃金請求の概要についてご説明いたします。

割増賃金とは?

賃金とは,使用者が労働者に対して労働の対価として支払う金銭のことをいいます。

労働基準法では,一定の場合,使用者は労働者に対して,基礎となる賃金に一定の割合で割増しをした賃金を支払わなければならないものと定めています。この割り増された賃金のことを「割増賃金」といいます。

割増賃金は,以下の場合に支払われます。

  • 1日8時間または1週間に40時間を超えて労働(時間外労働)をさせた場合
  • 深夜時間(午後10時以降午前5時までの間)に労働(深夜労働)をさせた場合
  • 法定休日に労働(休日労働)をさせた場合

>> 割増賃金とは?

時間外労働に対する割増賃金(残業代)とは?

前記のとおり,使用者は,労働者に1日8時間および1週間に40時間を超えて労働(時間外労働)をさせた場合,その時間外労働に対して割増賃金を支払う必要があります。

いわゆる「残業代」や「残業手当」などと呼ばれるものです。

残業代の割増率は,基礎賃金の25パーセント増し以上です。ただし,一定の大企業が使用者である場合には,月に60時間を超える時間外労働については,基礎賃金の50パーセント増し以上とされています。

多くの方が,労働契約や就業規則において1日8時間以上および1週間40時間以上の労働時間が定められていると,その労働時間が所定労働時間であって,それを超えない限り割増賃金を請求できないと考えていらっしゃいますが,これは間違いです。

1日8時間および1週40時間を超える労働をすれば,所定労働時間の定めにかかわらず,残業代の請求が可能です。

>> 時間外労働に対する割増賃金(残業代)とは?

深夜労働に対する割増賃金(深夜手当)とは?

前記のとおり,使用者は,労働者に深夜時間(午後10時以降午前5時までの間)に労働(深夜労働)をさせた場合にも,割増賃金を支払わなければならないとされています。

いわゆる「深夜手当」などと呼ばれるものです。深夜割増賃金の割増率は,基礎賃金の25パーセント増し以上です。

>> 深夜労働に対する割増賃金(深夜手当)とは?

休日労働に対する割増賃金(休日手当)とは?

前記のとおり,使用者は,法定休日に休日労働をさせた場合にも,割増賃金を支払わなければならないとされています。いわゆる「休日手当」などと呼ばれるものです。

労働基準法上,最低週1回(または4週間に4回)以上の休日を与えなければならないとされています。この最低週1回の休日のことを,法定休日といい,法定休日における労働を休日労働といいます。

休日割増賃金の割増率は,基礎賃金の35パーセント増し以上とされています。

法定休日以外の休日のことを法定外休日といいます。

法定外休日に労働をさせた場合には,法定休日の場合と異なり,休日割増賃金は発生しません。ただし,法定外休日での労働が時間外労働に該当する場合には,当然,時間外割増賃金が発生します。

>> 休日労働に対する割増賃金(休日手当)とは?

未払い割増賃金請求の主張と立証

時間外労働等をしたにもかかわらず,使用者から残業代などの割増賃金が支払われないという場合には,労働者は使用者に対して,その割増賃金の支払いを請求することができます。

残業代等の支払いを請求して,すんなりと使用者側が支払ってくれればよいのですが,そうでないということも少なくないでしょう。

したがって,将来,裁判になることも見据えて,請求が認められ得るのかどうかをあらかじめ検討しておく必要があります。

裁判において未払い割増賃金を請求する場合,ただ残業代等が支払われていないと主張するだけでは,残業代の支払いを認めてもらうことはできません。一定の主張・立証をする必要があります。

例えば,残業代請求の場合には,労働者側で,最低限,以下の事実の主張・立証が必要となってきます。

  • 使用者との間で労働契約を締結したこと
  • 上記労働・雇用契約に基づき(法定外)時間外労働をしたこと
  • 割増賃金支給日が到来したこと

なお,裁判等においては,請求する労働者の側で「支払いがなされていないこと」を立証する必要はありません。労働者側は所定賃金の金額がいくらかということを立証すればよく,未払いであることまでは立証する必要が無いのです。

むしろ,使用者の方で「支払いをしたこと」を立証しなければならないからです。

未払い割増賃金請求の流れ

実際に割増賃金を請求する場合には,前記の事実の主張・立証が可能かどうかを検討した上で,請求の手続を進めていくことになるでしょう。

具体的には,まず,タイムカード等をもとにして,労働時間を算出し,未払い割増賃金の金額を算定しておきます。

そして,使用者側に請求書を送付し,割増賃金請求権の消滅時効を中断させておく必要があります。割増賃金請求権は,2年という短期で時効によって消滅してしまうからです。

この未払い割増賃金請求書は,後に相手方に到達していることについての証拠に使えるように,配達証明付きの内容証明郵便によって郵送しておくのが通常です。

その上で,使用者側と交渉をしていきます。タイムカード等の証拠が手元にない場合には,それらの資料の開示も求めていきます。

交渉では満足のいく結果が得られない場合には,労働基準監督署等の機関を利用する方法もあります。それでも支払いがなされないのであれば,裁判手続を利用して請求をすることになるでしょう。

>> 未払い割増賃金請求の流れ

未払い割増賃金請求の各種手続・手段

実際に未払い割増賃金を請求する方法として,裁判外によるものとしては,任意の交渉による方法(いわゆる示談交渉),労働基準監督署を利用する方法,労政事務所を利用する方法,紛争調整委員会を利用する方法,労働委員会を利用する方法,労働組合を利用する方法,そして,裁判を利用する方法が考えられます。

労働基準監督署では,労働基準法違反を申告して所定賃金未払いの是正を勧告してもらう方法があります。

紛争調整委員会,各地方自治体の労政事務所,都道府県の労働委員会などでも,労使間の交渉のあっせんを行っているところもあります。また,労働組合に協力を求め,組合を通じて交渉を行うという方法もあります。

もっとも,上記の交渉やあっせん等は,労働基準監督署の勧告等を除き,あくまで話し合いですから,柔軟な対応が可能であるというメリットがある反面,強制力がないという欠点があります。

そこで,最終的には(あるいは,最初から)強制力のある紛争解決方法,すなわち裁判手続の利用を考える必要があります。

未払い残業代請求等の問題を解決するための裁判所を利用する手続としては,労使双方の話し合いを基調とする労働調停,話し合いを基調としつつも裁判官による終局的な決定がなされる労働審判,そして,話し合いではなく,労使双方の主張・立証をもとに裁判所が判決という終局判断をくだす労働訴訟とがあります。

また,使用者がかたくなに支払いを拒んでおり,仮に裁判等で勝ったとしても支払いが期待できないというような場合もあり得るでしょう。

こういう場合には,あらかじめ将来に備えて使用者側の財産を押えておく必要があります。そのための手続として,裁判所による民事保全手続というものがあります。

>> 未払い残業代等請求の各種手続・方法

割増賃金請求のための証拠

前記のとおり,使用者に対して割増賃金を請求する場合には,具体的な未払い割増賃金の金額を算定しておかなければなりません。

しかし,この割増賃金を計算するためには,前提として,どのくらいの時間,時間外労働等をしたのかを把握しておく必要があります。

そのためには,労働時間を記録した資料が必要です。代表的なものは,やはりタイムカードでしょう。タイムカードがない場合には,業務日報などを利用して労働時間を算定することになります。

ご自身の手元にはタイムカード等はないものの,使用者・会社側には残っているという場合には,使用者・会社側に対して,タイムカード等の資料を開示してもらうことになります。

使用者側に対してタイムカード等の開示を求めたにもかかわらず,開示をしてもらえなかった場合,裁判所による証拠保全手続を利用するということも考えられます。

ただし,証拠保全をしなくても,未払い残業代等の訴訟を提起すれば,裁判所から使用者側にタイムカード等の開示を促してくれるので,それによって開示されるのが通常と思われます。

最も問題となるのは,そもそもタイムカード等が作成されていないという場合です。この場合には,パソコンの起動・終了時刻のログデータや警備記録,FAX送信履歴を調査したりする場合もあります。

書面による証拠が確保できない場合には,同僚の方などの証人を探すということもあるでしょう。

未払い割増賃金請求の第一関門は,この実労働時間を立証するための証拠をいかに確保するのかという点でしょう。準備ができるものは,できる限りあらかじめ準備しておくのが望ましいといえます。

>> 未払い残業代請求に必要となる証拠

タイムカードの開示義務

前記のとおり,タイムカードを使用者側が所持している場合,そのタイムカードを開示していもらうように請求することがあります。

労働基準法等の法令に規定はありませんが,使用者側には,労働者に対してタイムカードを開示すべき法的な義務があると判断した裁判例もあります。

>> 使用者にタイムカードの開示義務はあるのか?

割増賃金の計算

割増賃金を計算するための資料がそろったならば,実際に未払いの金額はいくらになっているのかを計算していきます。

割増賃金の計算は,労働基準法等の法令に従って行うことになります。例えば,給料が月給制の場合,「算定基礎賃金 ÷ 月間所定労働時間 × (1+割増率) × 実労働時間数」という公式で計算することになります。

算定基礎賃金は,実際に支給されている所定賃金から,労働基準法等で定められている除外賃金を控除したものです。例えば,家族手当などは除外賃金として控除されることがあります。

月間の所定労働時間数は,労働契約の定めによります。労働契約に定めがない場合には,月平均所定労働時間数を算出して,それを用いることになります。

実労働時間数は,実際に時間外労働・深夜労働・休日労働をした時間数です。前記のタイムカード等で算出しておきます。 労働時間数は,1日ごとに,しかも,1分単位で算定するのが通常です。

以上が基本的な計算方法ですが,実際に計算してみると,日をまたぐ場合にはどのように計算するのかなど,意外にイレギュラーな部分が出てきます。

それらイレギュラーな部分の計算についても,個別に法令等の知識が必要となってくるため,それほど簡単な作業ではありません。正確な知識に基づいて,腰を据えて行う必要があります。

割増率についても,法的知識が必要です。時間外労働や深夜労働が複合した場合,その割増率は,各割増率の合計となります。

例えば,午前9時から午後12時(休憩1時間)まで働いた場合,労働時間は14時間となりますから,8時間を超える6時間は残業代として25パーセントが割増されます。

さらに,午後10時以降に2時間働いていますので,この2時間については25パーセントが割増されます。つまり,午後10時以降の2時間については,25+25=50パーセントの割増がなされるということです。

>> 割増賃金の計算方法・手順

未払い残業代等請求の争点

残業代等の未払い割増賃金を請求した場合,もちろん,素直に支払いをしてくれるという使用者もいるでしょう。しかし,そうでない場合も少なくありません。

未払い割増賃金の請求においては,大きく分けると,2つの点が争いになります。

1つは,実労働時間の問題です。どのくらいの時間外労働等をしたのかは,労働者側で主張・立証しなければなりません。この主張・立証ができているのかどうかが争点となってきます。

タイムカードがあれば,労働者に有利にはなります。しかし,タイムカードがあれば絶対にその記載に基づいて実労働時間が立証できるわけではないことには注意が必要でしょう。

また,そもそも勤務中であっても,はたしてその時間が労働時間といえるのかどうかが問題となることもあります。労働時間性(労働時間該当性)の問題です。例えば,仮眠時間などが挙げられます。

もう1つは,実労働時間の主張・立証がされた上での法的な反論です。

労働基準法等においては,一定の場合,残業代等の支払いをしなくてもよい場合や減縮できる場合が定められています。それが使用者側から反論されて争点となることがあるのです。

>> 未払い残業代等請求における使用者側の反論

労働時間(実労働時間)の主張・立証に関する争点

未払い残業代等請求においては,労働者側で,実際に時間外労働・休日労働・深夜労働をしたこと,どのくらいの時間数それらの労働をしたのかを主張し,証拠によって立証する必要があります。

>> 労働時間とは?

実労働時間数の主張と立証

前記のとおり,どのくらいの時間数,時間外労働等をしたのかを明らかにするための証拠としては,タイムカード等があります。これらをもとに実労働時間数を立証していくことになります。

この実労働時間数をタイムカード等によって主張・立証できたとしても,使用者側からは,タイムカードだけでは実労働時間を立証することはできない,タイムカード等に打刻されている始業・終業時刻の間に仕事をしていなかった等の反論がなされることもあります。

これに対しては,労働者側としては,タイムカード等から明らかになる労働時間中に,どのような業務を行っていたのか等を具体的に主張しておく必要があるでしょう。

>> 実労働時間とは?

労働時間性(労働時間該当性)の問題

実労働時間を主張・立証できたとしても,さらに,使用者側から,ある一定の時間はそもそも労働時間に該当しないから,残業代等は発生しない(または,基礎賃金に含まれない)旨の反論がされることがあります。

例えば,始業前の準備行為時間,作業と作業の間の待機時間(手待時間),夜勤中の不活動仮眠時間などが挙げられます。これらの時間は,実労働時間数から差し引くべきだという反論がなされるということです。

何をもって労働時間というかについては,その時間が使用者の指揮命令下にあるかどうかが判断の基準となります。

したがって,労働者側としては,具体的な労働契約の内容や勤務状況等を明らかにして,使用者側主張の時間が使用者の指揮命令下にあることを主張していくことになります。

>> 労働時間性の問題とは?

固定残業代(定額残業代・みなし残業代)の抗弁

未払い残業代等請求において,使用者側からなされる反論として最も多いものは「固定残業代(定額残業代・みなし残業代)」の抗弁でしょう。

固定残業代の抗弁とは,すでに支払い済みの賃金のうちに残業代等が含まれているので,これ以上,残業代等を支払う必要はないという反論です。

固定残業代の抗弁には,基本給部分に含まれているというタイプ,各種手当に含まれているというタイプ,年俸に含まれているというタイプ,歩合給に含まれているというタイプなど,さまざまな主張があります。

しかし,いずれの場合であっても,固定残業代が有効とされるためには,以下の要件を充たしていなければならないと考えるべきです。

  • 固定残業代とする旨の労働契約があること
  • 通常賃金部分と固定残業代部分が明確に区分されていること
  • 固定残業代で予定されている時間数を超過する部分については割増賃金を支払う旨の合意がされていること

したがって,労働者側としては,これらの要件を充たしていないことを指摘して,固定残業代の無効を主張していくことになります。

>> 固定残業代(定額残業代・みなし残業代)とは?

残業等禁止命令違反の抗弁

固定残業代の抗弁と並んで,未払い残業代等請求において使用者側からなされる反論として多いものとして,「残業等禁止命令違反」の抗弁があります。

これは,使用者側において労働者に対して残業などをしないように指揮命令していたにもかかわらず,労働者がその指揮命令に違反して勝手に残業を行っていたのであるから,使用者の指揮命令下にあるとはいえない,または,残業代等を支払う必要はないとする抗弁です。

残業等禁止命令違反の抗弁は認められないのが通常ですが,残業等禁止命令違反の抗弁を認めた裁判例もまったくないわけではありません。

したがって,労働者側としては,残業等禁止命令がなかったことや徹底されていなかったことなどを具体的に主張して再反論をしておく必要はあるでしょう。

労働時間規定等の適用除外の抗弁

労働基準法41条は,一定の労働者については,労働時間・休憩・休日の規定が適用されない旨を定めています。労働時間規定等の「適用除外」と呼ばれる制度です。

労働時間規定の適用が除外されるということは,時間外労働に対する割増賃金の規定も適用されないということです。つまり,使用者としては,残業代の支払いをしなくてもよいことになります。

同様に,休日規定が適用されないということは,休日労働に対する割増賃金の規定も適用されないことになりますから,休日割増賃金の支払いもなくなります。

そのため,未払い残業代・休日割増賃金請求においては,使用者側から適用除外の抗弁がなされることがあるのです。

>> 労働時間規定等の適用除外とは?

農業・水産業従事労働者の抗弁

労働基準法41条1号は,農業・水産業に従事する労働者については,労働時間等の規定の適用が除外される旨を定めています。

したがって,これらの業務に従事する労働者については,残業代や休日割増賃金の請求は認められないことになります。ただし,深夜割増賃金は発生します。

管理監督者の抗弁

労働基準法41条2号前段は,「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」については,労働時間等の規定の適用が除外される旨を定めています。いわゆる「管理監督者」の抗弁です。

適用除外のうちでも,最も多く反論されるのが,この管理監督者の抗弁でしょう。

もっとも,労働基準法41条2号前段にいう管理監督者とは,使用者・会社における職制上で管理者とされている者をいうのではありません。管理監督者というためには,以下の要件が必要とされています。

  • 経営者と一体的な立場であるといえるほど重要な職務と権限を付与されていること
  • 労働時間等の枠を超えて事業活動することがやむを得ないといえること
  • 賃金等労働条件について一般労働者に比べて優遇装置が取られていること

使用者によっては,会社の職制上で管理職であるから残業代等は発生しないとして残業代等を支払わらないこともあります。「名ばかり管理職」の問題と呼ばれています。

しかし,上記の要件を充たしていなければ,会社の職制上で管理職とされていたとしても,労働基準法41条2号前段の管理監督者とは認められません。

したがって,労働者側としては,上記の要件を充たしていないことを指摘して,管理監督者には該当しないという再反論を主張していくことになります。

>> 残業代等が支払われない管理監督者とは?

機密事務取扱者の抗弁

労働基準法41条2号後段は,「事業の種類にかかわらず機密の事務を取り扱う者」については,労働時間等の規定の適用が除外される旨を定めています。いわゆる「機密事務取扱者」の抗弁です。

もっとも,機密事務取扱者とは,「秘書その他職務が経営者又は監督若しくは管理の地位にある者の活動と一体不可分であって,出社退社などについて厳格な制限を受けない者」のことをいうとされています(昭和22年9月13日発基第17号)。

したがって,労働者側としては,上記の要件を充たしていないことを指摘して,機密事務取扱者には該当しないという再反論を主張していくことになります。

監視労働従事者の抗弁

労働基準法41条3号前段は,「監視労働に従事する者で,使用者が行政官庁の許可を受けたもの」については,労働時間等の規定の適用が除外される旨を定めています。いわゆる「監視労働従事者」の抗弁です。

もっとも,監視労働者とは,原則として一定部署にあって監視するのを本来の業務とし,常態として身体の疲労または精神的緊張の少ない労働者のことをいうと解されています(昭和22年9月13日発基第17号,昭和63年3月14日基発150号等)。

したがって,労働者側としては,行政官庁(労働基準監督署長)の許可を得ていないことや,許可を受けているとしても,上記の要件を充たしていないことを指摘して,監視労働従事者には該当しないという再反論を主張していくことになります。

>> 監視・断続的労働従事者とは?

断続的労働従事者の抗弁

労働基準法41条3号後段は,「断続的労働に従事する者で,使用者が行政官庁の許可を受けたもの」については,労働時間等の規定の適用が除外される旨を定めています。いわゆる「断続的労働従事者」の抗弁です。

断続的労働については,通常業務として断続的労働を行う場合のほか,労働基準法施行規則23条において,「宿直又は日直の勤務で断続的な業務について,様式第十号によつて,所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合」も同様に適用除外となる旨が定められています。

ただし,何が断続的労働に該当するのかについては,非常に詳細な労働基準監督署長の許可基準が定められています。医師の宿直の場合などは,さらに細目が定められていることもあります。

この許可基準は,裁判においても妥当するとされています。

そこで,労働者側としては,行政官庁(労働基準監督署長)の許可を得ていないことや,許可を受けているとしても,上記の許可基準を充たしていないことを指摘して,断続的労働従事者には該当しないという再反論を主張していくことになります。

>> 断続的労働従事者とは?

みなし労働時間制の抗弁

労働基準法は,一定の要件を充たす場合,実労働時間にかかわらず,あらかじめ定められた時間数しか労働をしていないとみなしてしまってもよいという制度を設けています。「みなし労働時間制」と呼ばれる制度です。

みなし労働時間制が有効とされると,どれほど労働をしても,あらかじめ定められた労働時間数しか働かなかったものとして扱われてしまうことになります。

そのため,使用者側から,残業代等の金額を減縮させるために,みなし労働時間制の抗弁がなされることがあるのです。

このみなし労働時間制には,以下のものがあります。

  • 事業場外労働のみなし労働時間制
  • 裁量労働のみなし労働時間制

>> みなし労働時間制とは?

事業場外労働みなし労働時間制の抗弁

営業マンなど事業場の外で業務を行っている場合,使用者としては,その労働者がどのくらい労働をしているのかを把握することが難しい場合がります。

そこで,労働基準法38条の2では, 労働者が事業場外で勤務しているという場合,一定の要件を満たしたときは,実労働時間による労働時間の算定として,所定労働時間数で労働したものとみなすことができるという制度を設けています。これが「事業場外労働みなし労働時間制」です。

もっとも,事業場外みなし労働時間制が有効となるためには,以下の要件を充たしている必要があります。

  • 労働者が労働時間の全部または一部を事業場外で従事したこと
  • 労働時間を算定しがたいこと

したがって,労働者としては,上記の要件を充たしていないことを再反論していく必要があります。

また,仮に要件を充たしているとしても,事業場外みなし労働時間は通常必要となる時間でなければならないとされていますから,その通常必要となる時間を主張して,みなされる労働時間数を減縮し,それを超える部分の残業代等を請求していくという方法もあります。

>> 事業場外みなし労働時間制とは?

裁量労働みなし労働時間制の抗弁

みなし労働時間制には,事業場外労働みなし労働時間制のほかに,裁量労働みなし労働時間制もあります。この裁量労働みなし労働時間制には,以下のものがあります。

  • 専門業務型裁量労働制
  • 企画業務型裁量労働制

>> 裁量労働みなし労働時間制とは?

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制とは,業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため,当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものについて,その労働者の労働時間を,あらかじめ労使協定によって定められた労働時間であるとみなすという制度です。

例えば,弁護士,建築士,税理士,公認会計士,編集者などが専門業務型裁量労働制の対象業務とされています。

もっとも,専門業務型裁量労働制の要件はかなり厳格なものとされています。その要件をすべて充たすのは,使用者側にとってもかなりハードルが高いといえます。

したがって,労働者としては,専門業務型裁量労働制の要件を充たしていないことを再反論していくのが効果的な再反論です。

>> 専門業務型裁量労働制とは?

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制とは,事業の運営に関する事項についての企画,立案,調査及び分析の業務であつて,当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため,当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務について,その業務を行う労働者の労働時間を,あらかじめ定められた労働時間であるとみなすという制度です。

この企画業務型裁量労働制は,専門業務型裁量労働制よりもさらに要件が厳格です。非常に厳しい要件といってよいでしょう。むしろ要件を充たせる場合の方が少ないかもしれません。

したがって,労働者としては,企画業務型裁量労働制の要件を充たしていないことを再反論していくのが効果的な再反論です。

>> 企画業務型裁量労働制とは?

変形労働時間制の抗弁

労働基準法は,一定の要件を充たす場合に,1日8時間または1週40時間という労働時間規制を変形させることができるという制度を設けています。これを「変形労働時間制」と呼んでいます。

変形労働時間制を採用したからといって,1日8時間または1週40時間の規制を完全に排斥できるわけではありませんが,ある時期は1日8時間を超える代わりに,その他の時期は1日8時間未満の労働時間とするというように,労働時間を一定期間における平均時間数で把握することによって調整が可能となります。

そのため,未払い残業代等請求においても,その請求をしている時期は変形労働時間制によって1日8時間または1週40時間を超える労働時間であっても残業代等は発生していない(または基礎賃金に含まれない。)という反論がなされることがあります。

ただし,この変形労働時間制も,労働基準法の要件を充たしている必要があります。

したがって,労働者としては,変形労働時間制の要件を充たしていないことを再反論していくのが効果的な再反論です。

業種・職種別の対応

未払い残業代等請求においては,それぞれの業種や職種によって,労働時間の主張・立証の仕方や,割増賃金の計算方法,使用者側からの反論が異なってきます。

そのため,それぞれの業種・職種に応じた法的知識や個別の対応が必要となることがあります。

各業種・職種ごとの特性を知っておいてこそ,適切な未払い残業代等の請求が可能となる場合もあります。そこが,未払い残業代等請求の難しさといってもよいでしょう。

>> 業種・職種別の未払い残業代等請求

未払い残業代等請求に強い弁護士をお探しの方へ

未払い残業代等請求をするためには,これまでに述べてきたとおり,さまざまな法的知識が必要となってきます。したがって,法律の専門家である弁護士のアドバイスやサポートが必要となってくることがあります。

もっとも,どの弁護士でもよいかといえば,そうではありません。やはり,未払い残業代等請求に強い弁護士を選ぶ必要があります。

東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所では,これまでにさまざまな業種・職種における未払い残業代等請求を成功させてきた経験と実績があります。

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