未払い残業代等の請求が裁判で認められた場合,民事保全手続という裁判手続を利用する場合があります。ここでは,民事保全手続とはどのような手続なのかについて考えます。
財産確保の必要性
未払い残業代等請求が裁判で認められたとしても,裁判所が取り立ててくれるわけではありません。相手方が任意に支払ってくれなければ,別途,強制的な回収手段を考えなければならないのです。
しかし,裁判前には存在したはずの財産が,裁判後にはなくなってしまっている場合もあります。そうなると,せっかく裁判に勝訴しても,意味が無いということになってしまうおそれがあります。
そこで,裁判の前にあらかじめ相手方の財産を押えておく必要性があるという場合もありえます。それを実現するのが民事保全手続です。
民事保全手続
民事保全手続にはさまざまな種類がありますが,金銭債権の保全として行われるものが「仮差押え」です。これは,相手方の有する不動産,債権,動産などをあらかじめ,「仮に」差し押さえておくというものです。。
仮に差し押さえるべき財産として,最も有効な財産は,やはり不動産でしょう。不動産が無い場合や不動産にすでに担保が付けられているような場合には,その他の財産に対する仮差押えを考える必要があります。
例えば,預金口座の差押えや売掛金債権の仮差押えなどが考えられます。また,使用者側に換価処分できる動産があれば,その動産の仮差押えも検討することになります。
ただし,この民事保全手続も裁判です。したがって,何でも保全できるわけではありません。
また,将来勝訴するかどうかは確実に分かるわけではありませんから,容易に保全を認めるとその相手方の利益が著しく害されるおそれがあります。そのため,保全の要件や手続はかなり厳格なものとなっています。
また,未払い賃金・残業代等の場合には,上記の仮差押えのほか,賃金仮払いの仮処分と呼ばれる民事保全手続をとる場合もあります。
これは,訴訟等によって未払い残業代等の請求が認められる前に,その訴訟期間中の労働者の生活を保持するために,賃金を仮に支払う措置をとるように命令するというものです。
もちろん仮処分ですから,訴訟で敗訴ということになれば返還しなければならないのですが,実質的には紛争の早期解決に役立つという場合もあり得ます(現在は労働審判による早期解決が可能であるため,有用性は薄れているかもしれません。)。










