未払い残業代等を請求する方法として,先取特権の実行という方法もあります。ここでは,残業代等請求権に先取特権が認められるのかについて考えます。
先取特権
ある債権について先取特権が認められると,この先取特権を行使することにより,訴訟などをしないでも,他の無担保債権に先だって債権の回収を図ることが可能となります。
特に,先取特権のうちでも一般の先取特権と呼ばれるものが認められると,特定の財産だけでなく,債務者の総財産に対して担保権を行使することが可能となります。
残業代等請求権に先取特権が認めらるのか?
では,残業代などの賃金請求権に一般の先取特権が認められるでしょうか?
この点,一般の先取特権が認められる債権には,「雇用関係」を原因とする債権が含まれると規定されています(民法第306条第2号)。
そして,この雇用関係を原因とする債権には,もちろん,残業代等の賃金を請求する債権も含まれることになります。
したがって,未払い残業代等の賃金請求権には,一般の先取特権が認められることになります。
そのため,残業代等請求権については,裁判を経ることなく,この一般先取特権を行使して回収を図ることが可能となる場合があるのです。
ただし,上記のとおり,訴訟などによって権利を確定させないでも執行をすることができるという,先取特権は非常に強力な優先権をもっていることから,その行使を認めるか否かについては,裁判所もかなり慎重な態度をとっています。
そのため,残業代等を請求する権利があるということが,仮に訴訟などをしたとしても当然に認められるであろうというほどに明らかな場合,つまり,証拠がかなり完全に揃っているような場合でないと,先取特権行使が認められないということです。










