未払い所定賃金の請求

給料や給与などの所定賃金は生活の糧になる重要な金銭です。

ここでは,未払い所定賃金の請求方法についてご説明いたします!

未払い所定賃金の概要

 賃金とは,使用者が労働者に対して労働の対価として支払う金銭のことをいいます。その賃金のうちで,いわゆる給料や給与など,労働契約・雇用契約・就業規則などで一定の時間働いた場合にそれに対して一定の金額を支払うことが定められているもののことを所定賃金と呼んでいます。

 所定賃金にはどういう意味があるかと言うと,まず第1に,生活の基盤となるという意味があります。それだけにこの所定賃金は,最低限度の賃金として,その他の給付よりも,より支払いが確実になされなければならないものであるという重要性があります。つまり,もっともその未払い・不払いが厳に禁止されるものであるということです。

 もう1つは,残業代,休日手当や深夜手当などの割増賃金を算定する場合の基礎となるものであるという意味があります。厳密に言うと,法律上所定賃金という用語は,労働契約等によって定められた賃金というよりも,むしろ,この割増賃金の基礎となる金額という意味で使われています。

 この所定賃金が未払いとなった場合,まず最初に考えなければいけないことは,証拠の収集・確保です。任意に(裁判などをせずに)請求しただけですぐに支払ってくれるのであれば問題ありませんが,すでに所定賃金すらまともに支払ってもらえていないのですから,任意に請求しただけですぐに支払ってくれるという場合は少ないでしょう。

 そうなると,将来的に裁判等になった場合に備えて,未払い所定賃金請求の根拠となる証拠をそろえておく必要が出てきます。所定賃金の請求の場合に必要となる証拠としては,例えば,労働契約書・雇用契約書,就業規則・賃金規程,給与明細などが考えられます。場合によっては,証人が必要となる場合もあるかもしれません。

 裁判等においては,請求する労働者の側で「支払いがなされていないこと」を立証する必要はありません。労働者側は所定賃金の金額がいくらかということを立証すればよく,未払いであることまでは立証する必要が無いのです。むしろ,使用者の方で「支払いをしたこと」を立証しなければならないからです。

 もっとも,そうかと言って,所定賃金の額を立証できるだけの証拠すら手元に無いという場合も無いとは言えません。そういう場合には,会社などの使用者が持っている証拠を開示してもらう必要があります。そして,使用者が開示を拒んでいるような場合には,証拠を強制的に回収する手続として,裁判所による証拠保全手続という手続があります。

 また,使用者がかたくなに支払いを拒んでおり,仮に裁判等で勝ったとしても支払いが期待できないというような場合もあり得るでしょう。こういう場合には,あらかじめ将来に備えて使用者側の財産を押えておく必要があります。そのための手続として,裁判所による民事保全手続というものがあります。

 では,実際に未払い所定賃金を請求する方法として,裁判外によるものとしては,任意の交渉による方法(いわゆる示談交渉),労働基準監督署を利用する方法,労政事務所を利用する方法,紛争調整委員会を利用する方法,労働委員会を利用する方法,労働組合を利用する方法,そして,裁判を利用する方法が考えられます。

 労働基準監督署では,労働基準法違反を申告して所定賃金未払いの是正を勧告してもらう方法があります。紛争調整委員会,各地方自治体の労政事務所,都道府県の労働委員会などでも,労使間の交渉のあっせんを行っているところもあります。また,労働組合に協力を求め,組合を通じて交渉を行うという方法もあります。

 もっとも,上記の交渉やあっせん等は,労働基準監督署の勧告等を除き,あくまで話し合いですから,柔軟な対応が可能であるというメリットがある反面,強制力がないという欠点があります。そこで,最終的には(あるいは,最初から)強制力のある紛争解決方法,すなわち裁判手続の利用を考える必要があります。

 未払い所定賃金問題を解決するための裁判所を利用する手続としては,労使双方の話し合いを基調とする労働調停,話し合いを基調としつつも裁判官による終局的な決定がなされる労働審判,そして,話し合いではなく,労使双方の主張・立証をもとに裁判所が判決という終局判断をくだす労働訴訟とがあります。

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