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労働基準法の基本

夜勤中等の仮眠時間は労働時間に該当するか?

夜勤の合間等に仮眠時間が設けられている場合があります。この深夜勤務中の仮眠時間のうち実作業に従事していない仮眠時間(不活動仮眠時間)であっても,当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価されるため,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているといえる場合であれば,労働時間に当たると判断されます。

ここでは,夜勤中等の仮眠時間は労働時間に該当するのかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

仮眠時間の労働時間性の問題

警備員などの職種の場合,深夜勤務を行うことがあります。この場合,深夜勤務中に通常の労働を行えば,その時間は実労働時間に該当し,それに対して残業代深夜手当などの賃金が発生することは当然です。

もっとも,深夜勤務等では,休息のために仮眠をとる時間が設けられていることがあります。

この仮眠時間が,本当に仮眠していればよい,言い換えれば,その仮眠時間中は業務対応を一切しなくてもよいのであれば,その時間は休憩時間であって,実労働時間には含まれないといってもよいでしょう。

しかし,実際問題として,仮眠時間であっても,緊急の業務対応をしなければならないような状況に置かれていることが少なくありません。

そこで,仮眠時間の労働時間性を考えるにあたっては,2つの場合を考える必要があります。

実作業に従事した場合

まず,仮眠時間中であっても,緊急業務対応などのために,実際に実作業を行うことはあるでしょう。

実作業に従事したのであれば,その実作業時間については賃金が発生します。それが仮眠時間中であろうとなかろうと,労働時間であることに間違いはありませんから,労働基準法に基づいて賃金が発生します。

実作業に従事していない場合(不活動仮眠時間)

問題となるのは,実作業に従事していない仮眠時間を労働時間とみることができるのかどうかです。この実作業に従事していない仮眠時間を「不活動仮眠時間」と呼ぶことがあります。

実作業を行っていない仮眠時間(不活動仮眠時間)であっても,労働者は,いつ業務対応を迫られるのか分からず,完全に休息できているとはいえないでしょう。

不活動仮眠時間であるからといって,これをまったく休憩時間として扱うのは労働者に不利益となることがあり得ます。

そこで,不活動仮眠時間を労働時間とみることはできないのかが問題となってきます。

以下では,この不活動仮眠時間の労働時間性についてご説明いたします。

>> 労働時間性が問題となる場合とは?

不活動仮眠時間の労働時間性の判断基準

労働時間とは,「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいいます(三菱重工業長崎造船所事件判決(最一小判平成12年3月9日)

仮眠時間は,仮眠等をするなどして休息することが許されている時間ですから,使用者の指揮命令下に置かれている時間とはいえず,労働時間には該当しないように思えます。

むしろ,仮眠時間は,休憩時間に該当すると考えるのが一般的な考え方でしょう。

もっとも,休憩時間とは,労働者が,労働時間の途中に,休息のために労働義務から解放される時間のことをいいます。

前記のとおり,仮眠時間中も業務対応をしなければならないとすれば,労働者としては,おちおち寝てはいられません。労働義務から完全に解放されているとはいえません。

したがって,不活動仮眠時間であっても,業務対応・実作業の従事が必要とされており,労働義務から完全に解放されているといえない場合には,休憩時間とはいえないと考えるべきです。

そして,業務対応等が必要である以上,その不活動仮眠時間も使用者の指揮命令下にあるものとして,労働時間として扱うのが妥当でしょう。

労働からの解放の保障

この点について,最高裁判所も,「不活動仮眠時間において,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって,不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。」と判示しています(最一小判平成14年2月28日・大星ビル事件判決)。

つまり,不活動仮眠時間であっても,労働からの解放が保障されていない場合には,使用者の指揮命令下に置かれていると評価できるので,その仮眠時間は労働時間に該当するということです。

この大星ビル事件判決から考えると,不活動仮眠時間が労働時間に該当するのか否かの判断基準は,「労働からの解放が保障されているか否か」にあるといえるでしょう。

したがって,不活動仮眠時間であっても,労働からの解放が保障されていない場合には,その仮眠時間は使用者の指揮命令下にあるとされ,労働時間として扱われることがあるのです。

>> 労働時間性に関する大星ビル事件判決とは?

労働契約上の役務の提供が義務付け

それでは,どのような場合に労働からの解放が保障されていないということになるのかというと,大星ビル事件判決は「当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である」と判示しています。

したがって,不活動仮眠時間が使用者の指揮命令下にある労働時間に該当するかどうかは,「当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合」に該当するのかどうかが問題となるのです。

仮眠時間の労働時間性に関する裁判例

前記のとおり,不活動仮眠時間が労働時間として扱われるかどうかは,労働からの解放が保障されているかどうかによってきます。

そして,労働からの解放が保障されていない場合とは当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合です。

どのような場合に労働からの解放が保障されていない(当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価できる場合)といえるのかについては,ケースバイケースです。

これは,具体的事案に即して検討しなければなりません。仮眠時間の労働時間性を判断するに当たっては,前記大星ビル事件判決のほか,以下の裁判例も参考となるでしょう。

東京高判平成17年7月20日(ビル代行事件判決)

不活動仮眠時間の労働時間性について判断した裁判例として,東京高判平成17年7月20日(ビル代行事件判決)があります。

同判決は,大星ビル事件判決を基準としつつも,「仮眠時間中,労働契約に基づく義務として,仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられ,実作業への従事がその必要が生じた場合に限られるとしても,その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情が認められる場合においては,労基法の労働時間には当たらないと解される」と判示しました。

そして,複数人による交代勤務のため仮眠時間中に業務対応をしたことは実際にはほとんどなかったと認定した上で,「本件の仮眠時間については,実作業への従事の必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に警備員として相当の対応をすべき義務付けがされていないと認めることができるような事情がある」として,仮眠時間の労働時間性を否定しています。

この裁判例では,労働からの解放の保障がされているかどうかの判断要素として,「仮眠時間中の実作業・業務対応がどの程度の頻度で行われていたのか」ということが重視されています。

最二小判平成19年10月19日(大林ファシリティーズ事件判決)

最二小判平成19年10月19日・大林ファシリティーズ事件判決は,住み込み管理人の所定労働時間外での不活動時間が労働時間に該当するのかが争われた事件です。

仮眠時間の労働時間性そのものが争われた事件ではありませんが,労働時間の解放の保障の有無が問題となっており,仮眠時間の労働時間性を考えるに当たっても参考になります。

この判例も,大星ビル事件と同様,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価されるかどうかを判断要素とした上で,住み込み管理人の所定労働時間外での不活動時間を労働時間に該当するものと判断しています。

>> 労働時間性に関する大林ファシリティーズ事件判決とは?

東京高判平成23年8月2日

不活動仮眠時間の労働時間性について判断した裁判例として,東京高判平成23年8月2日があります。

同裁判例では,仮眠時間中に帰宅することが許されていなかったこと,警報に対応することなど緊急の事態に応じた臨機の対応をすることが義務付けられていたこと,現実に実作業に従事する必要が生じていたことを具体的事実から認定しています。

そして,その上で,「労働からの解放が保障されていたとはいえず,具体的な状況に応じて役務の提供が義務付けられ,本件休憩・仮眠時間中の不活動時間も被控訴人の指揮命令下に置かれていたと認められるから,本件休憩・仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである」として,仮眠時間も労働時間に該当すると判断しています。

この裁判例では,仮眠時間の場所的な拘束の有無,緊急対応の義務付け,仮眠時間中に実作業に従事していたか否かが判断要素となっています。

仙台高判平成25年2月13日

不活動仮眠時間の労働時間性について判断した裁判例として,仙台高判平成25年2月13日があります。

この裁判例も,前記大星ビル事件判決の規範を採用しつつ,仮眠時間中に実作業に従事した事例が8か月に1回程度とわずかであること,実作業に従事した時間分の時間外労働手当は請求できるものとされていたことなどから,仮眠時間は労働時間に該当しないと判示しています。

前記東京高判ビル代行事件判決と同様,仮眠時間中に実作業に従事した頻度が重要な要素とされているといえます。また,実作業をした場合に割増賃金が支払われる体制であるかどうかも要素とされています。

仮眠時間の労働時間性に関する裁判例

前記のとおり,不活動仮眠時間が労働時間に該当するかどうかについては,当該仮眠時間において「労働からの解放が保障されている」かどうかが判断の基準となります。

そして,労働からの解放が保障されている場合とは,「当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される」かどうかを判断する必要があります。

これは具体的な事情に応じて個別に判断されることになりますが,前記の各裁判例からすると,裁判所は,以下のような要素を総合的に考慮して判断しているものと思われます。

  • 仮眠の場所的拘束の有無(帰宅の事由の有無)
  • 労働契約の内容における業務対応の義務付けの有無
  • 仮眠時間中における実作業への従事の有無・頻度・所用時間
  • 実作業をした場合に割増賃金が支払われる体制の有無

特に,前記裁判例からすると,実際に仮眠時間中に実作業を行った頻度が重視されているように思われます。

仮眠時間の労働時間性を争う場合には,労働者側としては,上記のような要素(これだけに限りませんが)を主張・立証していく必要があるでしょう。

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