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労働基準法の基本

最二小判平成19年10月19日・大林ファシリティーズ事件

労働時間性に関する重要判例として,大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決(最二小判平成19年10月19日)があります。大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決では,住み込みマンション管理人の所定労働時間外における住民対応等の時間が労働時間に該当するのかどうかが争われています。

ここでは,労働時間性に関する最二小判平成19年10月19日(大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決)について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

済み込み管理人の所定時間外の業務対応

残業代などの賃金は,労働者が実際に労務を提供した実労働時間に対して支払われます。したがって,労働者がある行為をした時間が労働時間に該当するのかどうかは重要な意味を持っています。

ある行為が労働時間に該当するかどうかの問題のことを労働時間性の問題と呼ぶことがあります。この労働時間性に関し問題となる場合の1つに仮眠時間等の不活動時間の問題があります。

不活動時間が問題となる事例として,済み込み管理人の所定時間外における業務対応時間があります。

済み込み管理人の場合,所定労働時間に管理人業務をすることは当然ですが,管理をしているマンション等に済み込んでいるため,所定労働時間外であっても,住民からの要望に応えて何らかの業務対応をしなければならない場合があります。

そのような所定労働時間外での住民に対する業務対応等の時間が労働時間に該当するのかが問題となってくるということです。

この済み込み管理人による所定労働時間外での業務対応時間の労働時間性について判断をした判例が,最高裁判所第二小法廷平成19年10月19日判決(大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決)です。

>> 労働時間性が問題となる場合とは?

大林ファシリティーズ事件の事案

大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決の事案における労働者側は,あるマンションの済み込み管理人をしていた夫婦の妻(夫はすでに亡くなっていました。)です。

他方,使用者側は,そのマンション管理組合からマンション管理を委託されていた管理会社(を吸収合併した会社)です。

マンション管理人である夫婦は,管理人として所定労働時間において業務を行うだけでなく,所定労働時間外にも,マンション住民からの要望に応えて,受付業務を行い,宅配物の受け渡し,駐車の指示,自転車置き場の整理,ゴミの整理などを行っていました。

そこで,夫婦が,所定労働時間外において住民対応等をしなければならなかったことから,所定労働時間外における時間も賃金が発生する労働時間に該当する,として割増賃金等を請求したのが,大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決の事案です。

大林ファシリティーズ事件判決における労働時間性の判断基準

大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決では,以下のように判示して,所定時間外業務対応の労働時間性に関する判断基準を示しています。

労働基準法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という。)とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,実作業に従事していない時間(以下「不活動時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは,労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである(最高裁平成7年(オ)第2029号同12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁参照)。そして,不活動時間において,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって,不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして,当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である(最高裁平成9年(オ)第608号,第609号同14年2月28日第一小法廷判決・民集56巻2号361頁参照)。

>> 大林ファシリティーズ事件事件判決(裁判所HPから)

労働時間の意味

大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決は,三菱重工業長崎造船所事件判決(最一小判平成12年3月9日)を引用しています。

すなわち,大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決は,労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい,実作業に従事していない仮眠時間(不活動仮眠時間)が労働時間に該当するか否かは,労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」ものとしています。

労働時間性の判断基準として「労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否か」という基準を挙げているのです。

また,この判断は「客観的に定まる」ものとされています。つまり,労働契約等にどのような定めがされているかに左右されずに判断されるということです。

>> 労働時間性の判断基準とは?

大星ビル事件判決の引用

上記のとおり,不活動仮眠時間が労働時間に該当するか否かは,使用者の指揮命令下に置かれていたと評価できるかどうかによって決められることになります。

そして,大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決は,大星ビル事件判決(最一小判平成14年2月28日)を引用して,「当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる」とし,使用者の指揮命令下にあるかどうかは,労働者が労働から解放されることを保障されているかどうかに関わることを判示しています。

さらに,大星ビル事件判決に従って,労働からの解放が保障されているかどうかは,「労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合」であるかどうかに関わってくるとしています。

>> 労働時間性に関する大星ビル事件判決とは?

大林ファシリティーズ事件判決における事実認定と評価

前記のとおり,大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決は,所定時間外業務対応の労働時間性についての判断基準を示しています。その上で,以下のとおり事実認定を行っています。

原審(東京高判平成16年11月24日)の判断

前提として,この最高裁判所判例の原審(東京高判平成16年11月24日)は,以下の事実認定をしていることが示されています。

原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判断して,被上告人の請求の一部を認容し,その余の請求を棄却した。

(1) 被上告人らは,平日,土曜日,日曜日及び祝日を問わず,午前7時(管理員室照明点灯,ごみ置場の扉の開錠)から指示業務を開始し,午後10時(管理員室照明消灯)で指示業務を終えている。平日及び土曜日については,被上告人らは,2人で指示業務に従事しており,代休取得もしていない。また,時間外の宅配物等の受渡しも被上告人らの所定業務であると見るのが相当である。そして,各指示業務は,断続的であり,その各所要時間が短いけれども,その間も,住民や外来者から要望が出される都度,それらに応えるという役務の提供を随時求められていたから,次の業務を開始するまで待機することが命ぜられた状態と同視すべきであり,被上告人らが本件会社の指揮命令下に置かれていたと認めるのが相当である。
 したがって,被上告人らは,平日については午前7時から午前9時まで及び午後6時から午後10時まで,土曜日については午前7時から午後10時まで,それぞれ時間外労働に従事したものと認めるのが相当である。

(2) 他方,日曜日及び祝日については,受付等の業務も平日及び土曜日に比べて相当に少なく,リサイクル用ごみの整理も特に日曜日及び祝日に処理すべき業務として指示されていたものではなかったことが認められ,また,本件雇用契約及び本件管理委託契約においても日曜日及び祝日は休日とされ,住民側も平日及び土曜日と同様の業務を期待していなかったことがうかがわれる。これらに加え,もともと被上告人らの従事した業務は,1人でも遂行可能な程度のものであったこと,本件会社も被上告人らに対し,日曜日及び祝日には管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉以外の作業を求めていなかったことをも考慮すると,被上告人らのうち少なくとも1名は,業務を離れ,自由に時間を利用することができたものと認められる。
 したがって,日曜日及び祝日については,被上告人らのうちの1名が午前7時から午後10時まで休日労働又は時間外労働に従事したものと認めるのが相当である。

(3) 住み込みで管理員業務に従事する被上告人らの一方が,所定労働時間内に,日常行動(日用品の買い物等)のため時間を割くこともあり得ることは,業務の性質上当然に予想されることであり,それが長時間にわたるものでない限り,その際にも本件会社の指揮命令権が及んでいるものとみて差し支えない。そして,病院への通院や犬の運動も,被上告人らの日常生活に伴う事項であったと認められるから,本件会社の指揮命令下から離脱した行為であると認めることは相当でない。
 したがって,被上告人らが病院に通院したり,犬を運動させたりしたことがあったとしても,それらに要した時間については,割増手当の支払の対象となる労働時間を検討するに当たり,考慮する必要はない。

>> 大林ファシリティーズ事件事件判決(裁判所HPから)

上記原審の判断に対して,最高裁判所は,原審の判断のうちの平日の時間外労働に関する部分は認めつつ,その他は認められないとしました。

(4) しかしながら,原審の上記判断のうち,上記3(1)中の平日の時間外労働に関する部分は是認することができるが,その余は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

平日の時間外労働に関する判断

大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件の事案では,労働者側の所定労働時間は午前9時から午後6時まで,日曜日,祝日,忌引き・夏季休暇・年末年始休暇を含む休暇日が休日とされていました。

その上で,本件では,労働者側が平日の時間外労働,土曜日・日曜日の時間外労働(または休日労働)を争っています。

最高裁判所は,そのうちの平日の時間外労働について,以下のとおり判断をしています。

(2) 平日の時間外労働について

ア 前記事実関係等によれば,本件会社は,被上告人らに対し,所定労働時間外においても,管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉,テナント部分の冷暖房装置の運転の開始及び停止等の断続的な業務に従事すべき旨を指示し,被上告人らは,上記指示に従い,各指示業務に従事していたというのである。また,本件会社は,被上告人らに対し,午前7時から午後10時まで管理員室の照明を点灯しておくよう指示していたところ,本件マニュアルには,被上告人らは,所定労働時間外においても,住民や外来者から宅配物の受渡し等の要望が出される都度,これに随時対応すべき旨が記載されていたというのであるから,午前7時から午後10時までの時間は,住民等が管理員による対応を期待し,被上告人らとしても,住民等からの要望に随時対応できるようにするため,事実上待機せざるを得ない状態に置かれていたものというべきである。さらに,本件会社は,被上告人らから管理日報等の提出を受けるなどして定期的に業務の報告を受け,適宜業務についての指示をしていたというのであるから,被上告人らが所定労働時間外においても住民等からの要望に対応していた事実を認識していたものといわざるを得ず,このことをも併せ考慮すると,住民等からの要望への対応について本件会社による黙示の指示があったものというべきである。
そうすると,平日の午前7時から午後10時までの時間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については,被上告人らは,管理員室の隣の居室における不活動時間も含めて,本件会社の指揮命令下に置かれていたものであり,上記時間は,労基法上の労働時間に当たるというべきである。したがって,被上告人らが平日は午前7時から午前9時まで及び午後6時から午後10時まで時間外労働に従事した旨の原審の判断は,正当として是認することができる。

イ また,前記事実関係等によれば,平日においては,後述する土曜日の場合とは異なり,1人体制で執務するようにとの本件会社からの指示はなく,実際にも,被上告人らは,所定労働時間外も含め,2人で指示業務に従事したというのである。そうすると,被上告人らが2人で時間外労働に従事した旨の原審の判断についても是認することができる。

ウ なお,原審の判断中には,消灯時刻が午後10時を過ぎている日について,現実の消灯時刻までを労働時間であるとした部分があるが,上記判断は,被上告人らが午後10時以降も上記消灯時刻まで業務に従事したとの事実認定を前提としたものとして,是認することができないではない。

>> 大林ファシリティーズ事件事件判決(裁判所HPから)

上記判示のとおり,裁判所は以下の事実を認定しています。

  • 本件使用者は,労働者側に対し,所定労働時間外においても,管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉,テナント部分の冷暖房装置の運転の開始及び停止等の断続的な業務に従事すべき旨を指示し,被上告人らは,上記指示に従い,各指示業務に従事しており,労働者側は,この指示に従い,各指示業務に従事していた。
  • 本件使用者は,労働者側に対し,午前7時から午後10時まで管理員室の照明を点灯しておくよう指示していた。
  • 使用者側が作成し,労働者側に交付されていた業務マニュアルには,労働者側は,所定労働時間外においても,住民や外来者から宅配物の受渡し等の要望が出される都度,これに随時対応すべき旨が記載されていた。
  • 使用者側は,労働者側から管理日報等の提出を受けるなどして定期的に業務の報告を受け,適宜業務についての指示をしていた。

これらの事実から,裁判所は,さらに以下の判断をしています。

  • 午前7時から午後10時までの時間は,住民等が管理員による対応を期待し,労働者側としても,住民等からの要望に随時対応できるようにするため,事実上待機せざるを得ない状態に置かれていた。
  • 労働者側が所定労働時間外においても住民等からの要望に対応していた事実を認識していた。

これらの認定事実等から,「住民等からの要望への対応について使用者側による黙示の指示があった」ことを認定しています。

その上で,使用者側による黙示の指示があったと言える以上,平日の午前7時から午後10時までの時間については,「被上告人(労働者)らは,管理員室の隣の居室における不活動時間も含めて,本件会社(使用者)の指揮命令下に置かれていたものであり,上記時間は,労基法上の労働時間に当たる」と判断しています。

また,平日の時間外労働については,「1人体制で執務するようにとの本件会社からの指示はなく,実際にも,被上告人らは,所定労働時間外も含め,2人で指示業務に従事した」と認定し,労働者側夫婦2人ともに平日時間外労働があったことを認めています。

土曜日の時間外労働に関する判断

前記のとおり,原審は,労働者側2名ともに,土曜日については午前7時から午後10時まで時間外労働をしていたと認定しています。

これに対して最高裁判所は,以下のとおり判示しています。

(3) 土曜日の時間外労働について

ア 土曜日においても,平日と同様,午前7時から午後10時までの時間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)は,管理員室の隣の居室における不活動時間も含めて,労基法上の労働時間に当たるものというべきである。
 また,前記事実関係等によれば,本件会社は,土曜日は被上告人らのいずれか1人が業務を行い,業務を行った者については,翌週の平日のうち1日を振替休日とすることについて,被上告人らの承認を得ていたというのであるが,他方で,被上告人らは,現実には,翌週の平日に代休を取得することはなかったというのである。そうである以上,土曜日における午前7時から午後10時までの時間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)は,すべて時間外労働時間に当たるというべきである。

イ しかしながら,上記のとおり,本件会社は,土曜日は被上告人らのいずれか1人が業務を行い,業務を行った者については,翌週の平日のうち1日を振替休日とすることについて,被上告人らの承認を得ていたというのであり,また,前記事実関係等によれば,本件会社は,被上告人らに対し,土曜日の勤務は1人で行うため,巡回等で管理員室を空ける場合に他方が待機する必要はないことなどを指示していたというのである。さらに,前記事実関係等によれば,そもそも管理員の業務は,実作業に従事しない時間が多く,軽易であるから,基本的には1人で遂行することが可能であったというのである。
 上記のとおり,本件会社は,被上告人らに対し,土曜日は1人体制で執務するよう明確に指示し,被上告人らもこれを承認していたというのであり,土曜日の業務量が1人では処理できないようなものであったともいえないのであるから,土曜日については,上記の指示内容,業務実態,業務量等の事情を勘案して,被上告人らのうち1名のみが業務に従事したものとして労働時間を算定するのが相当である。

>> 大林ファシリティーズ事件事件判決(裁判所HPから)

最高裁判所は,原審と同様,土曜日についても,午前7時から午後10時まで,管理員室の隣の居室における不活動時間も含めて,すべて労働時間に該当すると判断しています。

ただし,原審と異なる判断をしている部分もあります。

原審は,上記午前7時から午後10時までの時間をすべて労働時間とした上,労働者側夫婦2名とも,その時間中労働をしていたことを認定しています。

これに対し,最高裁判所は,以下の事実を認定した上で,指示内容,業務実態,業務量等の事情を勘案して,労働者側夫婦のうち1名のみが業務に従事したものとして労働時間を算定するのが相当であると判断しました。

  • 使用者側は,土曜日は労働者側夫婦のいずれか1人が業務を行い,業務を行った者については,翌週の平日のうち1日を振替休日とすることについて,被上告人らの承認を得ていた。
  • 使用者側は,労働者側夫婦に対し,土曜日の勤務は1人で行うため,巡回等で管理員室を空ける場合に他方が待機する必要はないことなどを指示していた。
  • そもそも管理員の業務は,実作業に従事しない時間が多く,軽易であるから,基本的には1人で遂行することが可能であった。

つまり,最高裁判所は,午前7時から午後10時までの時間は労働時間に該当するけれども,その労働時間は1人分として算定すべきであるとしたということです。

日曜日・祝日の労働に関する判断

原審は,日曜日・祝日については,労働者側夫婦のうちの1名が午前7時から午後10時まで休日労働又は時間外労働に従事したと判断をしています。

これに対して,最高裁判所は,以下のとおり判断しています。

(4) 日曜日及び祝日の休日労働ないし時間外労働について

 前記事実関係等によれば,本件会社は,日曜日及び祝日については,本件雇用契約において休日とされていたことから,管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉以外には,被上告人らに対して業務を行うべきことを指示していなかったというのであり,また,日曜日及び祝日は,本件管理委託契約においても休日とされていたというのである。
 そうすると,被上告人らは,日曜日及び祝日については,管理員室の照明の点消灯及びごみ置場の扉の開閉以外には労務の提供が義務付けられておらず,労働からの解放が保障されていたということができ,午前7時から午後10時までの時間につき,待機することが命ぜられた状態と同視することもできない。したがって,上記時間のすべてが労基法上の労働時間に当たるということはできず,被上告人らは,日曜日及び祝日については,管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉その他本件会社が明示又は黙示に指示したと認められる業務に現実に従事した時間に限り,休日労働又は時間外労働をしたものというべきである。

>> 大林ファシリティーズ事件事件判決(裁判所HPから)

原審では,少なくとも労働者側夫婦のうちの1人が,日曜日・祝日の午前7時から午後10時まで労働をしていたことを認めています。

これに対して最高裁判所は,まず,以下の事実を認定しています。

  • 使用者側は,日曜日・祝日については,雇用契約において休日とされていたことから,管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉以外には,労働者側夫婦に対して業務を行うべきことを指示していなかった。
  • 日曜日及び祝日は,管理委託契約においても休日とされていた。

そして,これらの事実から,以下の判断を下しています。

  • 日曜日・祝日については,管理員室の照明の点消灯及びごみ置場の扉の開閉以外には労務の提供が義務付けられておらず,労働からの解放が保障されていた。
  • 午前7時から午後10時までの時間につき,待機することが命ぜられた状態と同視することもできない。

その上で,日曜日・祝日については,午前7時から午後10時までの時間のすべてが労基法上の労働時間に当たるということはできず,管理員室の照明の点消灯・ごみ置場の扉の開閉その他本件会社が明示又は黙示に指示したと認められる業務に現実に従事した時間に限って,休日労働または時間外労働をしたものとすべきであると判断しています。

通院時間・犬の運動時間

大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件では,労働者側夫婦が病院に通院していた時間や,労働者側夫婦が飼っていた犬を散歩させる時間も労働時間に含まれるかどうかも争われています。

この点について,原審は,通院時間や犬の運動時間も労働時間に含まれるという判断をしています。

これに対して,最高裁判所は以下のとおり判示しています。

(5) 病院への通院,犬の運動に要した時間について被上告人らが病院に通院したり,犬を運動させたりしたことがあったとすれば,それらの行為は,管理員の業務とは関係のない私的な行為であり,被上告人らの業務形態が住み込みによるものであったことを考慮しても,管理員の業務の遂行に当然に伴う行為であるということはできない。病院への通院や犬の運動に要した時間において,被上告人らが本件会社の指揮命令下にあったということはできない。

>> 大林ファシリティーズ事件事件判決(裁判所HPから)

最高裁判所は,通院時間・犬の運動時間等は,「業務とは関係のない私的な行為」であり「業務遂行に当然に伴う行為」とはいえないから,これらの時間中に使用者の指揮命令下にあったとはいえないと判断しています。

つまり,通院時間や犬の運動時間については,労働時間に含まれないと判断したということです。

大林ファシリティーズ時間の事実認定まとめ

大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件では,以下の事実を判断の根拠として採用しています。

  • 本件使用者は,労働者側に対し,所定労働時間外においても,管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉,テナント部分の冷暖房装置の運転の開始及び停止等の断続的な業務に従事すべき旨を指示し,被上告人らは,上記指示に従い,各指示業務に従事しており,労働者側は,この指示に従い,各指示業務に従事していた。
  • 本件使用者は,労働者側に対し,午前7時から午後10時まで管理員室の照明を点灯しておくよう指示していた。
  • 使用者側が作成し,労働者側に交付されていた業務マニュアルには,労働者側は,所定労働時間外においても,住民や外来者から宅配物の受渡し等の要望が出される都度,これに随時対応すべき旨が記載されていた。
  • 使用者側は,労働者側から管理日報等の提出を受けるなどして定期的に業務の報告を受け,適宜業務についての指示をしていた。
  • 使用者側は,土曜日は労働者側夫婦のいずれか1人が業務を行い,業務を行った者については,翌週の平日のうち1日を振替休日とすることについて,労働者の承認を得ていた。
  • 使用者側は,労働者側夫婦に対し,土曜日の勤務は1人で行うため,巡回等で管理員室を空ける場合に他方が待機する必要はないことなどを指示していた。
  • そもそも管理員の業務は,実作業に従事しない時間が多く,軽易であるから,基本的には1人で遂行することが可能であった。
  • 使用者側は,日曜日・祝日については,雇用契約において休日とされていたことから,管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉以外には,労働者側夫婦に対して業務を行うべきことを指示していなかった。
  • 日曜日及び祝日は,管理委託契約においても休日とされていた。

これらをみると,最高裁判所は,労働時間性の判断において,実際に使用者がどのような指示をしていたのかまたはしていなかったのか,労働契約や業務マニュアル等にどのような事項が規定されていたのかを重視していることが分かります。

不活動時間の労働時間性等を争う場合,労働者側としては,やはり,使用者からどのような指示を受けていたのかということを主張・立証していかなければならないでしょう。

大林ファシリティーズ事件判決の結論

大林ファシリティーズ・オークビルサービス事件判決では,以下の結論が下されています。

以上によれば,原審の前記判断のうち,①土曜日について,被上告人ら2名についてそのいずれもが時間外労働に従事したものとする部分,②日曜日及び祝日について,現実に業務に従事した時間を検討することなく,被上告人らのうち1名 が午前7時から午後10時まで休日労働又は時間外労働に従事したものとする部分,③被上告人らが病院への通院や犬の運動に要した時間も本件会社の指揮命令下にあったとする部分は,是認することができず,上記各部分には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この限度で理由があり,平日についても,③の関係で,通院及び犬の運動に要した時間を控除して時間外労働をした時間を算定する必要があるから,結局,原判決中上告人敗訴部分は,すべて破棄を免れないことになる。そして,本件については,更に所要の審理を尽くさせるため,これを原審に差し戻すこととする。

>> 大林ファシリティーズ事件事件判決(裁判所HPから)

原審では,平日・土曜日・日曜日・祝日のいずれについても,通院時間や犬の運動時間も含めて,午前7時から10時までの時間を労働時間と認め,平日・土曜日は労働者側夫婦2人ともが労働していたとし,日曜日・祝日は1人だけが労働していたものとして労働時間を算定するものと判断しています。

これに対して,最高裁判所は,以下の判断をしています。

  • 平日の午前7時から10時までの時間は,通院時間・犬の運動時間を除いて労働時間。労働者夫婦2人とも労働していたものとして算定。
  • 土曜日の午前7時から10時までの時間は,通院時間・犬の運動時間を除いて労働時間。労働者夫婦1人が労働していたものとして算定。
  • 日曜日・祝日の午前7時から10時までの時間は,原則として労働時間に該当しない。実作業に従事していた時間のみ労働時間。

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