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労働基準法の基本

最一小判平成14年2月28日(大星ビル事件判決)

労働時間性に関する重要判例として,大星ビル事件判決(最一小判平成14年2月28日)があります。大星ビル事件判決では,労働時間性の判断基準として,労働時間とは使用者の指揮命令下にある時間としつつも,労働からの解放が保障されていなければ,使用者の指揮命令下にないとはいえないとし,当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には労働からの解放が保障されているとはいえないという基準を示しています。労働時間性についての最重要判例といってよいでしょう。

ここでは,労働時間性に関する最一小判平成14年2月28日(大星ビル事件判決)について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

不活動仮眠時間の労働時間性

残業代などの賃金は,労働者が実際に労務を提供した実労働時間に対して支払われます。したがって,労働者がある行為をした時間が労働時間に該当するのかどうかは重要な意味を持っています。

ある行為が労働時間に該当するかどうかの問題のことを労働時間性の問題と呼ぶことがあります。この労働時間性に関し問題となる場合の1つに仮眠時間等の不活動時間の問題があります。

そして,仮眠時間等の不活動時間の労働時間性について,重要な判断基準を示したのが,最高裁判所第一小法廷平成14年2月28日判決(大星ビル事件判決)です。

大星ビル事件判決が示した判断基準は,労働時間性の判断における最も重要な判断基準となっています。

>> 労働時間性が問題となる場合とは?

大星ビル事件の事案

大星ビル事件の使用者側はビル管理会社です。同社では,技術系従業員について泊まり勤務があり,その泊まり勤務においては,連続7~9時間の仮眠時間が設けられていました。

また,泊まり勤務に対しては泊まり勤務手当が支払われ,また,泊まり勤務中に実作業を行った場合には,その実作業をした時間分の残業代や深夜割増賃金が支払われることになっていました。

これに対し,労働者側である技術系従業員が,泊まり勤務手当および実作業時間分の残業代等のほか,仮眠時間も労働時間に含まれるとして,その仮眠時間の残業代等を請求したというのが,大星ビル事件の事案です。

大星ビル事件における労働時間性の判断基準

大星ビル事件判決では,以下のように判示して,仮眠時間の労働時間性に関する判断基準を示しています。

労基法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という。)とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,実作業に従事していない仮眠時間(以下「不活動仮眠時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは,労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである(最高裁平成7年(オ)第2029号同12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁参照)。そして,不活動仮眠時間において,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって,不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして,当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。

>> 大星ビル事件判決(裁判所HPから)

労働時間の意味

大星ビル事件判決は,三菱重工業長崎造船所事件判決(最一小判平成12年3月9日)を引用しています。

すなわち,大星ビル事件判決は,労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい,実作業に従事していない仮眠時間(不活動仮眠時間)が労働時間に該当するか否かは,労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものとしています。

不活動仮眠時間の労働時間性の判断基準として「労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否か」という基準を挙げているのです。

また,この判断は「客観的に定まる」ものとされています。つまり,労働契約等にどのような定めがされているかに左右されずに判断されるということです。

指揮命令下にあるか否かの判断

上記のとおり,不活動仮眠時間が労働時間に該当するか否かは,使用者の指揮命令下に置かれていたと評価できるかどうかによって決められることになります。

そして,大星ビル事件判決は,どのような場合に使用者の指揮命令下に置かれていたと評価できるのかについて「当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる」としています。

つまり,使用者の指揮命令下にあるか否かは,労働からの解放が保障されているか否かによって判断できるとしているのです。

したがって,労働からの解放が保障されていないのであれば,使用者の指揮命令下にあることになるので,その不活動仮眠時間は労働時間に該当するということになります。

労働からの解放が保障されているか否かの判断

使用者の指揮命令下にあるかどうかは,労働からの解放が保障されているかどうかにかかってきますが,それでは,労働からの解放が保障されているとはどういうことなのでしょうか。

大星ビル事件判決は,労働からの解放の保障について「当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。」としています。

つまり,労働からの解放が保障されているか否かは,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価できるか否かによって判断することができるということです。

大星ビル事件判決における判断基準のまとめ

大星ビル事件判決によれば,不活動仮眠時間であっても,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価できる場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働からの解放が保障されているとはいえないのであれば,使用者の指揮命令下にあるといえるので,労働時間に該当するということになります。

したがって,不活動仮眠時間が労働時間に該当するか否かは,結局,「当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価できるかどうか」を判断基準としていくべきことになるのです。

大星ビル事件における事実認定

前記のとおり,大星ビル事件判決は,不活動仮眠時間の労働時間性についての判断の基準を示しています。

そして,その上で,以下のとおり事実認定を行っています。

そこで,本件仮眠時間についてみるに,前記事実関係によれば,上告人らは,本件仮眠時間中,労働契約に基づく義務として,仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられているのであり,実作業への従事がその必要が生じた場合に限られるとしても,その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないから,本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる。したがって,上告人らは,本件仮眠時間中は不活動仮眠時間も含めて被上告人の指揮命令下に置かれているものであり,本件仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである。

>> 大星ビル事件判決(裁判所HPから)

大星ビル事件判決では,まず「本件仮眠時間中,労働契約に基づく義務として,仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられている」と認定しています。

労働契約において,仮眠時間中の警報・電話対応を求められていることを認定しているのです。

その上で,「実作業への従事がその必要が生じた場合に限られるとしても,その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しない」としています。

つまり,実際に警報や電話対応等の実作業に従事することが少なかったとしても,それだけでは足りず,その他に実作業従事の必要性が皆無に等しいなど実質的に実作業従事の義務付けがされていないと認めることができるような事情がなければ,実作業従事の義務付けがされていないとはいえないとしているのです。

そして,「実作業従事の必要性が皆無に等しいなど実質的に実作業従事の義務付けがされていないと認めることができるような事情」がない以上は,「本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができ」,「本件仮眠時間中は不活動仮眠時間も含めて被上告人の指揮命令下に置かれているものであり,本件仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである」と判断しているのです。

この大星ビル事件判決の事実認定において,特に重要となるのは,「実作業従事の必要性が皆無に等しいなど実質的に実作業従事の義務付けがされていないと認めることができるような事情」があるかどうかということを認定していることです。

実際に仮眠時間の労働時間性を争う場合でも,「実作業従事の必要性が皆無に等しいなど実質的に実作業従事の義務付けがされていないと認めることができるような事情」があるのかどうかを主張・立証していかなければならないでしょう。

大星ビル事件の結論

大星ビル事件判決では,前記のとおり,不活動仮眠時間の判断基準と事実認定を明らかにしています。

この判決は,仮眠時間の労働時間性のみならず,さまざまな労働時間性の判断のメルクマールともなっている非常に重要な判例とされています。

そして,これらの判断基準や事実認定の結論として,不活動仮眠時間の労働時間性を認めているのです。

労働時間性を争う場合には,この大星ビル事件判決の検討は不可欠といってよいでしょう。

その他の争点

大星ビル事件判決では,労働時間性のほかに,以下の争点についても判断をしています。

まず,所定労働時間として就業規則等に定められていない労働時間について賃金を支払う旨の規定がない場合,不活動仮眠時間は所定労働時間として認められていないので,賃金の支払いの対象とされていないことになると判示しています。

しかし,そうであるとしても,不活動仮眠時間が労働時間であると認められる場合には,不活動仮眠時間を労働時間として認めていない就業規則等の規定は労働基準法13条に照らして無効になるので,労働基準法13条および37条に基づき,その不活動仮眠時間についての賃金を請求することは可能であると結論付けています。

また,大星ビル事件では,変形労働時間制の適用が争われていますが,それについても,「,特定の週又は日につき法定労働時間を超える所定労働時間を定めた場合には,法定労働時間を超えた所定労働時間内の労働は時間外労働とならないが,所定労働時間を超えた労働はやはり時間外労働となる」という判断をしています。

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