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未払い割増賃金の請求

最一小判昭和63年7月14日(小里機材事件判決)

固定残業代(定額残業代・みなし残業代)制度の有効性について判断をした判例として,小里機材事件判決(最高裁判所第一小法廷判昭和63年7月14日判決)があります。ここでは,この最高裁判所第一小法廷判昭和63年7月14日(小里機材事件)判決について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

小里機材事件判決の意義

固定残業代(定額残業代・みなし残業代)の問題で,よく参考判例として挙げられるものとして小里機材事件判決(最一小判昭和63年7月14日)があります。

この事件では,主として,割増賃金算定の基礎となる賃金に,各種の手当が含まれるのかという点が争点とされています。固定残業代がメインで争われたというものではありません。

もっとも,固定残業代の有効性についても言及されており,そのため,固定残業代の参考判例として挙げられることがあります。

>> 固定残業代(定額残業外・みなし残業代)とは?

小里機材事件判決の判示

小里機材事件上告審判決は,以下のとおり判示しています(以下は一部抜粋)。

尚,原判決は仮定的判断として,「仮に,月一五時間の時間外労働に対する割増賃金を基本給に含める旨の合意がされたとしても,その基本給の内割増賃金に当たる部分が明確に区分されて合意がされ,かつ労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されている場合にのみ,その予定割増賃金分を当該月の割増賃金の一部又は全部とすることができるものと解すべき」であるとするが,時間外労働の時間が一五時間を超えていた場合労基法に従って所定の時間外手当を請求出来るのは法律上当然のことであって,そのことの故に,被上告人が時間外手当の支払義務を負担するのは格別,被上告人主張の見込残業の合意そのものが無効となると解すべき何等の根拠もないもので理由不備があるばかりか法律上の解釈を誤ったものである 。

上記のとおり,小里機材事件上告審判決は,その原審における固定残業代(定額残業代・みなし残業代)制度の有効性の判断基準を挙げています。原審では,以下の判断基準が示されています。

  • 基本給の内割増賃金に当たる部分が明確に区分されて合意がされていること
  • 労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されている

原審は,この2つの要件を満たさない限り,固定残業代制度は無効となるという判断をしています。そして,上告審判決は,この原審の判断基準について,特に否定をしていません。

そのため,小里機材事件上告審判決は,固定残業代制度の基準(原審の基準)を是認したものということで,固定残業代制度の規範を示した判例として挙げられることがあります。

>> 基本給に固定残業代が含まれるとの主張は有効なのか?

小里機材事件上告審判決の評価

前記のとおり,小里機材事件上告審判決は,原審の示した固定残業代(定額残業代・みなし残業代)制度の有効性の判断基準それ自体について,特に否定をしていません。

そのため,この原審の判断を基準を最高裁も支持しているとして,固定残業代制度の判断基準を示した判例として紹介されることがあります。

しかし,たしかに,最高裁は上記原審の判断基準を否定はしていませんが,基準それ自体に対しては,原審の判断を維持しているものの,明確に肯定しているというわけでもありません。

あくまで,固定残業代制度があっても,その予定残業時間を超える部分については割増賃金を請求できるということは「法律上当然のこと」であるとしているだけで,基準自体についてまで当然のものであるとは言っていません。

それどころか,上記基準に該当しない場合は固定残業代制度自体が無効となるとした原審の判断は「法律上の解釈を誤ったものである」とまで判断しています。

さらに言えば,この判例の後に固定残業代制度の有効性等が争われた最高裁判決(高知県観光事件判決(最二小判平成6年6月13日)テックジャパン事件判決(最一小判平成24年3月8日)など)では,この小里機材事件判決を引用していません。

つまり,最高裁としても,小里事件判決上告審は,固定残業代制度の判断基準を最高裁として示した判決ではない(あくまで原審の判断を挙げているだけ)というように捉えているというではないかと思われます。

特に,前記原審の判断基準のうち2つ目の基準(差額を支払うことを合意していること)については,差額が生じていたならば,その差額を請求すればよいだけなのだから,この合意をしていなからといって固定残業代の合意を無効とまでする必要があるのかどうかについては争いのあるところです。

小里機材事件上告審判決もその点については「法律上の解釈を誤ったものである」としているということは,原審の基準を維持しているとはいえ,すべてを肯定しているとまでは考えていないように思えます。

したがって,固定残業代制の有効性を争う場合には,この小里機材事件上告審判決の基準のうち,1つ目の基準は用いることができるとしても,全部を用いることができるのかどうかは検討が必要であるといえるでしょう(なお,テックジャパン事件最高裁判決の櫻井裁判官補足意見では,2つ目の基準も必要であるとの見解を採用しています。)。

とはいえ,この小里機材事件判決は,労働者側にとってはかなり有利な判決であることは間違いありませんので,固定残業代が争われている場合には参考になるでしょう。

>> 固定残業代制度が有効となるための要件とは?

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