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未払い残業代の請求

当直・宿直・日直勤務に残業代等は支払われるのか?

当直とは,所定労働時間外に通常労働とは異なる業務・作業を行う勤務形態のことをいいます。日直とは日中に当直を行うことをいい,宿直とは宿泊を伴う当直のことをいいます。当直・日直・宿直勤務時間は,原則として労働時間に該当すると解すべきでしょう。ただし,断続的な宿日直業務の場合は,労働基準法施行規則23条による労働時間規定等の適用除外が問題となってきます。

ここでは,この当直・宿直・日直勤務に残業代等は支払われるのかについて,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。

当直・宿直・日直勤務における未払い残業代等請求

労働者の勤務形態として,当直・宿直・日直勤務があります。

当直・宿直・日直という用語は非常にさまざまな意味として用いられていますが,一般的に,「当直」とは,所定労働時間外に通常労働とは異なる業務・作業を行う勤務形態のことをいい,そのうち日中に行う当直を「日直」,宿泊を伴って行う当直を「宿直」と呼んでいます。

未払い残業代等請求をする場合,この当直・宿直・日直勤務時間についても残業代等が発生するのかどうか争われることがあります。

例えば,夜間の警備員や,病院における医師・看護師等の宿直などにおいて問題となることがあります。

当直・宿直・日直勤務時間中に通常の労働をした場合であれば,それはもはや単なる当直等業務ではないので,その作業時間は実労働時間となり,それについて通常賃金や残業代等の割増賃金が発生することは当然でしょう。

問題となるのは,通常労働をしていない当直・宿直・日直勤務時間です。この時間についても賃金・残業代等が発生するのかどうかが争われるということです。

当直・宿直・日直勤務時間についての未払い残業代等請求においては,以下の点が問題となってきます。

当直・宿直・日直勤務時間は労働時間に該当するか?

当直・宿直・日直勤務についての未払い残業代等請求において,まず問題となるのは,そもそもその当直・宿直・日直勤務時間が労働時間に該当するのかどうかという点です。

残業代を含めて賃金は労働時間に対して発生します。より具体的にいえば,実際に労働をした実労働時間に対して発生します。

したがって,当直・宿直・日直勤務時間が労働時間に該当しないのであれば,そもそも残業代等は発生しません。そのため,当直・宿直・日直勤務時間の労働時間性が争われることがあるのです。

この点,最高裁判所は「労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)32条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,右の労働時間に該当するか否かは,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって,労働契約,就業規則,労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」としています(三菱重工業長崎造船所事件判決(最一小判平成12年3月9日))。

つまり,使用者の指揮命令下にあるかどうかが,労働時間性を判断する際の基準となるということです。

労働者が自主的に当直・宿直・日直勤務をすることはほとんど考えられません。当直・宿直・日直勤務は,通常の業務や作業をしないとはいっても,使用者の指揮命令下にあることは間違いないでしょう。

したがって,当直・宿直・日直勤務時間は,原則として,労働時間(実労働時間)に該当すると考えるべきでしょう。

>> 労働時間性の判断基準とは?

宿直中の不活動仮眠時間

宿直勤務の場合,仮眠時間が設けられていることがあります。

仮眠時間はあくまで休息のための時間ですから,宿直勤務時間が労働時間に該当するからといって,仮眠時間も当然に労働時間に含まれるわけではありません。

もっとも,仮眠時間であっても,使用者の指揮命令下にあると言える場合には,労働時間に該当することになります。

この点,最高裁判所も,「不活動仮眠時間において,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって,不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。」と判示しています(最一小判平成14年2月28日・大星ビル事件判決)。

そして,大星ビル事件判決は「当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である」としています。

したがって,仮眠時間であっても,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合であれば,労働時間に含まれることになり,賃金・残業代等が発生することになります。

>> 仮眠時間は労働時間に該当するか?

当直・宿直・日直勤務は労働時間規定等の適用除外となるか?

労働基準法 第41条

この章,第6章及び第6章の2で定める労働時間,休憩及び休日に関する規定は,次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
③ 監視又は断続的労働に従事する者で,使用者が行政官庁の許可を受けたもの

労働基準法施行規則 第23条

使用者は,宿直又は日直の勤務で断続的な業務について,様式第十号によつて,所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は,これに従事する労働者を,法第32条の規定にかかわらず,使用することができる。

前記のとおり,当直・宿直・日直勤務時間は原則として労働時間に該当するとしても,当該時間について労働基準法41条3号・労働基準法施行規則23条の適用が争われることがあります。

労働基準法41条3号は,「監視又は断続的労働に従事する者で,使用者が行政官庁の許可を受けたもの」については,労働時間・休憩時間・休日の規定の適用が除外されるとしています。

これを受けて,労働基準法施行規則23条は,「宿直又は日直の勤務で断続的な業務について,様式第十号によつて,所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合」も同様に,労働時間・休憩時間休日の規定の適用が除外されることを定めています。

労働時間・休憩時間・休日の規定の適用が除外されるということは,要するに,時間外労働や休日労働というものもなくなるということであり,当然,時間外労働に対する割増賃金(残業代)や休日労働に対する割増賃金(休日手当)の支払いもなくなるということです。

※なお,深夜労働の規定は適用除外されません。したがって,労働基準法41条各号に該当する場合であっても,深夜労働をすればそれに対する割増賃金(深夜手当)の支払いは必要です。

そこで,当直・宿直・日直勤務時間について,労働基準法施行規則23条によって労働時間・休憩時間・休日規定の適用除外になるのかどうかが争われることになります。

>> 労働時間規定等の適用が除外される宿日直勤務とは?

労働基準監督署長の許可がない場合

前記労働基準法施行規則23条の規定からも明らかなとおり,労働時間規定等の適用が除外されるのは,断続的な宿日直業務のうちでも「様式第十号によつて,所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合」に限られています。

この労働基準監督署長の許可がない場合には,仮に断続的な宿日直業務であっても,労働時間等規定の適用は除外されないと解するべきです。

したがって,労働者側としては,まずは労働基準監督署長の許可を得ているのかどうかを確認し,それがなければ,適用除外の効果は発生しないことを主張していけばよいでしょう。

労働基準監督署長の許可がある場合

労働基準監督署長によって,労働基準法施行規則23条の許可がされている場合には,原則として,当該宿日直勤務については労働時間規定等の適用が除外されることになります。

したがって,労働基準監督署長の許可がある場合には,労働者側の未払い残業代等請求を認めてもらうことはなかなか難しくなります。

もっとも,労働基準監督署長の許可がある場合であっても,その当直・宿直・日直勤務が,労働者の勤務態様等に照らして,労働基準法施行規則23条にいう断続的な宿日直業務に該当しないときには,労働時間規定等の適用除外は認められないと解されています。

実際,裁判例においても,医療機関の宿日直勤務について,断続的労働の許可を受けているものの実態は断続的労働とはいえないとして,使用者側に宿日直勤務時間の全部について残業代等を支払うよう命じたものがあります(大阪高裁平成22年11月16日・県立奈良病院事件高裁判決)。

この場合に問題となってくるのが,労働基準法施行規則23条にいう断続的な宿日直業務に該当するか否かの判断基準ですが,基本的には,行政解釈における労働基準監督署長の許可基準を,裁判においても基準とすることになるでしょう。

断続的な宿日直勤務の一般的な許可基準

断続的な宿日直勤務の一般的な許可基準としては,以下のものがあります(昭和63年3月14日基発150号)。

断続的な宿直又は日直勤務の許可基準

規則第23条に基づく断続的な宿直又は日直勤務のもとに,労働基準法上の労働時間,休憩及び休日に関する規定を適用しないこととしたものであるから,その許可は,労働者保護の観点から,厳格な判断のもとに行われるべきものである。宿直又は日直の許可にあたっての基準は概ね次のとおりである。

一 勤務の態様
イ 常態として,ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり,定時的巡視,緊急の文書又は電話の収受,非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可するものであること。
ロ 原則として,通常の労働の継続は許可しないこと。したがって始業又は終業時刻に密着した時間帯に,顧客からの電話の収受又は盗難・火災防止を行うものについては,許可しないものであること。

二 宿日直手当
宿直又は日直の勤務に対して相当の手当が支給されることを要し,具体的には,次の基準によること。
イ 宿直勤務1回についての宿直手当(深夜割増賃金を含む。)又は日直勤務1回についての日直手当の最低額は,当該事業所において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金(法第37条の割増賃金の基礎となる賃金に限る。)の1人1日平均の3分の1を下らないものであること。ただし,同一企業に属する数個の事業場について,一律の基準により宿直又は日直の手当額を定める必要がある場合には,当該事業場の属する企業の全事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者についての1人1日平均額によることができるものであること。
ロ 宿直又は日直勤務の時間が通常の宿直又は日直の時間に比して著しく短いものその他所轄労働基準監督署長が右イの基準によることが著しく困難又は不適当と認めたものについては,その基準にかかわらず許可することができること。

三 宿日直の回数
許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については,宿直勤務については週1回,日直勤務については月1回を限度とすること。ただし,当該事業場に勤務する18歳以上の者で法律上宿直又は日直を行いうるすべてのものに宿直又は日直をさせてもなお不足でありかつ職務の労働密度が薄い場合には,宿直又は日直業務の実態に応じて週1回を超える宿直,月1回を超える日直についても許可して差し支えないこと。

四 その他
宿直勤務については,相当の睡眠設備の設置を条件とするものであること。

労働者側としては,上記許可基準を参考にしつつ,労働契約の内容,実際の勤務態様,賃金の支払い状況等からして許可基準に該当しないことを具体的に主張・立証して,労働基準法施行規則23条にいう断続的な宿日直業務に該当しないことを明らかにしていくことになります。

なお,業種によっては,上記一般的な許可基準のほかに個別の許可基準が設けられている場合もありますので,その場合には,その個別の許可基準を参考とすることになります。

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