割増賃金

未払い割増賃金の請求

歯科医師による未払い残業代等請求

歯科医師・歯医者の方であっても,時間外労働・深夜労働・休日労働をすれば,残業代等の割増賃金の支払いを請求することができるのが原則です。

ここでは,歯科医師による未払い残業代請求・サービス残業問題について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

歯科医師でもサービス残業代等を請求できるのか?

歯科医師・歯医者さんというと,専門性が高く,国家資格がなければ業務を行えません。

そのため,医師の場合と同様に,時間外労働をするのが当然であり,残業代などは支払われないと考えている方も少なからずいらっしゃいます。

しかし,歯科医師であっても,雇用されているのであれば労働基準法上の「労働者」です。労働者である以上,時間外労働等をすれば,他の職業と同じく,割増賃金を支払ってもらえるのが原則です。

もしこれら残業代などの割増賃金が未払いであれば,歯科医師・歯医者の方も,歯科医院などの使用者に対して,未払い残業代等を請求することができます。

もっとも,未払い残業代等請求においては様々な争点があります。このページの以下では,歯科医師の未払い残業代等請求において,ご質問の多いもの又は実際に争われる可能性のある争点についてご説明していきます。

>> その他の業種・職種における未払い残業代請求

労働時間に関する問題

残業代等の割増賃金は,労働時間に対して支払われるものです。この労働時間の主張・立証責任は請求する側にあります。したがって,まず第一に労働時間の主張・立証について検討する必要があります。

労働時間性の問題

労働時間の問題としては,まず何より,対象となる勤務・業務をした時間が労働基準法上の労働時間といえるのかが問題となることがあります。いわゆる労働時間性の問題です。

通常の歯科医療業務を行っている時間が労働時間に該当すること当然です。問題となることがあるとすれば,当直・宿日直勤務時間が労働時間といえるかどうかでしょう。

歯科医師の場合も,勤務先が病院である場合には,当直・宿日直勤務がありますので,当直・宿日直勤務が労働時間に該当するかどうかが問題となることがあります。

この点,歯科医師の当直・宿日直勤務時間も,それが使用者の指揮命令下にあると評価できる場合には,労働時間として扱われることになります。

ただし,歯科医師の当直・宿日直勤務時間が労働時間に該当する場合であっても,それが労働基準法41条3号断続的労働に該当する場合には,労働時間規定等の適用が除外されるため,残業代等が支払われないことがあります。

したがって,歯科医師側としては,当直・宿日直勤務時間が使用者側の業務命令によるものであることや,断続的労働の許可を得ていないこと・許可を得ているとしても,実態が許可基準を満たしていないことなどを主張・立証していく必要があります。

cf. 医師の当直・宿日直勤務に残業代等は支払われるのか?

実労働時間の主張・立証

サービス残業代の請求において,労働者側が最も苦労する点というと,やはり実際に労務を提供した時間(実労働時間)の主張・立証ですが,歯科医師の方の場合でも同様です。

実労働時間の立証において最も有効なものは,タイムカードなど出退勤時刻が記載されている書類です。これらを準備しておく必要があります。

仮にタイムカードなどが手元になく,歯科医院側が保管しているという場合であれば,歯科医院側に開示を求めることになります。

そもそも,タイムカードなどがないということであれば,それ以外の立証を考えなければなりません。

たとえば,専用パソコンのログイン・ログアウトの記録,入退室の警備記録,時刻記載のある診断書・カルテ・医療記録・診療録などが考えられるでしょう。

>> 未払い残業代請求に必要となる証拠

裁量労働制

前記のとおり,歯科医師は国家資格であり,しかも高度の専門性があります。歯科医師でない人が歯科医師の治療行為をすることはできません。

そのため,歯科医師には,「専門業種型裁量労働制」が適用されると誤解している方もいらっしゃいます。

この裁量労働制が適用される場合には,時間外労働に対する割増賃金(残業代)は支払わなくてもよいことになりますが,実は,歯科医師には裁量労働制は適用されません。

専門職裁量労働制は,法令で定められている職種・業種にしか適用できないとされており,その適用対象となる職種・業種に,歯科医師は含められていないからです。

したがって,歯科医師による未払い残業代等請求において,裁量労働制が問題となることはないのです。

>> 専門職裁量労働制とは?

管理監督者

労働時間規制の適用が除外される場合として「管理監督者」に当たる場合があります。

仮にこの管理監督者に該当するということであれば,残業代や休日割増賃金は支払われないということになります(深夜割増賃金は支払われます。) 。

もっとも,管理監督者に該当する場合というのは非常に限定されています。雇用されている一般の歯科医師の方が,この管理監督者に該当する場合というのは稀でしょう。

管理監督者に該当する場合があるとすれば,経営に関与している場合や,支部などの責任者であり,しかもその支部の経営を大幅に任されているような場合に限られるでしょう。

単に,歯科医療行為を行うに当たって,部下や歯科助手・技師の方などに指示・命令をするというだけでは,管理監督者には当たらないのです。

>> 労働基準法41条2号の管理監督者とは?

固定残業代

未払い残業代等請求において,最も争点となることが多いものといえば,「固定残業代(定額残業代・みなし残業代)の問題でしょう。歯科医師の方のサービス残業代の請求においても同様です。

固定残業代とは,要するに,給料の中にまたは手当の中に,一定残業時間分の残業代が含まれているので,その分はすでに支払い済みであるという主張です。年俸制の場合も,固定残業代が問題となることがあります。

仮に固定残業代制度が有効であれば,この決められた時間分を超える部分の残業代しか請求できないということになります。

もっとも,固定残業代が設けられているということについて何らの説明も合意もないということも少なくありません。その場合には,そもそも固定残業代制度は有効ではないという点を争っていく必要があるでしょう。

>> 固定残業代(定額残業代・みなし残業代)とは?

年俸制

歯科医師の方の給与の決め方として,いわゆる「年俸制」が採用されている場合があります。年俸制であるから残業代は発生しない,ということはありません。

年俸制はあくまで年単位で賃金の金額を定めるというものにすぎませんから,年俸制であろうと,労働基準法に定める時間外労働等をすれば,やはり残業代等は発生するのです。

ただし,年俸の中に,前記の固定残業代が含まれているというような場合には,それが有効であれば,その固定残業で決められている時間分を超える時間外労働等に対する割増賃金しか請求できませんので,確認しておく必要があるでしょう。

>> 年俸制の場合でも残業代を請求できるか?

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