使用者が支払う社会保険料は,法律上,賃金として扱われるのでしょうか?賃金として扱われるならば,労働基準法上の規制を受けることになるため,労働者にとっては重要な問題となってきます。
社会保険料と賃金の問題
使用者が法人である場合又は使用者が法人ではないが労働者が5人以上いる場合には,社会保険に加入しなければなりません。そして,この社会保険の保険料は,通常,使用者と労働者とが一定の割合で相互に負担して支払うことになります。
たいていの場合,この社会保険料は,給与・給料などから労働者の負担部分が控除され,その控除した金額と使用者が自己の負担部分の金額とを併せて社会保険料全額を支払うことになっていると思います。
また,場合によっては,使用者と労働者との取り決めで,社会保険料の労働者負担部分も使用者が負担するという場合もあるでしょう。良心的な使用者であれば,休業期間中の社会保険料も使用者が肩代わりしてくれているという場合もあるかもしれません。
社会保険料の使用者負担部分を使用者が支払うというのは,法律上の義務であり当然のことですから,特に労働者の利益となるというわけではありません。したがって,使用者負担部分は,使用者が使用者のために支払うものにすぎませんから,賃金ではありません。
それでは,使用者が,労働者に代わって,使用者の経済的負担において社会保険料の労働者負担部分を支払う場合,これは賃金といえるのでしょうか? それとも,単なる恩給的な福利厚生にすぎないと考えるべきなのでしょうか?
使用者が支払う労働者負担部分の社会保険料が賃金に当たるとすると,賃金として労働基準法上の規制を受け,厳しい支払いの義務が使用者に課せられることになり,また,割増賃金計算の基礎となる所定賃金に含まれることにもなりますから,労働者にとっては重要な問題です。
使用者が支払う社会保険料の労働者負担部分
社会保険料の労働者負担部分も使用者が支払う旨の取り決めが,就業規則・労働契約・労働協約などによって規定されている場合,この使用者が支払う社会保険料の労働者負担部分は賃金となります。
使用者が,労働者に労働してもらう対償(対価)として,本来労働者自身が支払わなければならない社会保険料の労働者負担部分を代わりに支払うというのですから,賃金として扱われることになります。
他方,上記のような就業規則等による取り決めがない場合は,原則として賃金には当たらず,単なる立替金ということになるでしょう。もちろん,労働者と使用者との間で,労働の対価としてある特定の月だけは使用者が支払うというような個別の合意があれば別です。
また,同様に,就業規則等で休業期間中の社会保険料の労働者負担部分も使用者が負担する旨の規定があれば,この支払いも賃金となります。








