労働者の生存権の保障の観点から,最低賃金という制度が設けられています。ここでは,この最低賃金とは何かについて考えます。
労働者の生存権
日本国憲法第25条は,「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定し,いわゆる生存権を基本的人権の1つとして保障しています。この生存権は,もちろん労働者にも保障されています。
しかし,使用者と労働者の間には厳然たる力の差があります。私的自治とはいっても,あまりに賃金の取り決めについて労使間の自由にしてしまっていると,労働者が著しく不利益を被ることは明白です。
そこで,労働者の生存権を実質的に保障しようという観点から,国家が,使用者が労働者に対して支払う賃金の最低基準を定めるという制度を設けています。それが最低賃金という制度です。
すなわち,最低賃金とは,使用者が労働者に対して支払う賃金の最低限度を画するものであるといえます。
最低賃金法
最低賃金については,労働基準法ではなく,最低賃金法(略して最賃法)に定められています。
その第1条には,「この法律は,賃金の低廉な労働者について,賃金の最低額を保障することにより,労働条件の改善を図り,もつて,労働者の生活の安定,労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに,国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。 」として,労働者の生存権を実質的に保障することが目的である旨が明示されています。
同法によれば,最低賃金は,一定の地域ごとに,その地域の実情に応じて金額が定められるとされています。また,その金額は,生活保護水準を考慮するものとされています。
例えば,東京都の最低賃金は,平成23年10月1日から,時間額で837円となっています(平成23年11月27日現在)。
この最低賃金には,以下の賃金は含まれません。
- 家族手当,通勤手当,精勤手当
- 臨時に支払われる賃金
- 1月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 所定時間外労働に対して支払われる所定時間外労働手当
- 所定休日労働に対して支払われる所定休日手当
- 所定労働時間内に行われる深夜労働に対して支払われる深夜手当
したがって,以下のものを除外した上で,最低賃金を上回っている必要があります。
なお,前記のとおり,最低賃金の計算において除外されるのは,「所定」時間外労働手当,「所定」休日労働手当,「所定」労働時間内に行われる深夜手当です。
あくまで就業規則等で定められた所定労働時間や所定休日を基準としています。単純に,法外残業や法定休日の休日手当,深夜手当等を除外するというわけではないことに注意が必要です。
最低賃金に違反した場合
最低賃金を下回る賃金を支給していた場合は,言うまでもなく違法です。まずは,労働基準監督署や労働局に申告する必要があるでしょう。
もちろん,最低賃金額と現実の支給額との差額を使用者に対して請求することができます。
残業代等の未払いの場合,時間外労働や深夜労働の賃金を考慮すると,全体として最低賃金を下回っている場合もありますので,そのような場合には,最低賃金法違反が問題となることもあります。








