消滅時効の中断
残業代など割増賃金を含む賃金や退職金などを請求する権利は,支払期日から一定期間を経過すると,事項によって消滅してしまいます。つまり,もはや残業代等を請求することができなくなってしまうということです。これを消滅時効といいます。
残業代などの賃金は支払いの日の翌日から2年,退職金は支払いの期日の翌日から5年で消滅時効にかかるとされています。
もっとも,この消滅時効を止める方法はあります。それが,消滅時効の中断と呼ばれる制度です。消滅時効が中断されると,それまで進行していた消滅時効の期間はリセットされます。
例えば,すでに残業代の支払期日の翌日から1年半が経過していたときに消滅時効の中断がなされた場合,それまで進行してきた消滅時効期間は「0」に戻ります。したがって,その中断の日の翌日からまた2年が経過しなければ消滅時効は完成しないことになります。
消滅時効中断の方法
消滅時効の中断の方法には,「請求」「差押え,仮差押え,仮処分」「承認」があります。また,特殊な方法として「催告」という方法もあります。
請求とは,裁判上で請求することを意味します。つまり,訴えを提起して訴訟で請求したり,労働審判を申立てて請求することを指します。
差押え・仮差押え・仮処分とは,要するに,残業代等の賃金について,強制執行や民事保全手続をすることを意味します。
これらの法的な手続をとることによって,消滅時効は中断します。
また,使用者の側が残業代等の賃金未払いがあることを認めた場合には,「承認」したものとして,やはり消滅時効が中断します。
この承認には,単に未払いがあることを認めた場合だけでなく,未払い残業代等の支払いの猶予を求めたり,分割払いなどの和解を求めたりしたような場合も含むとされています。
もう1つ特殊な消滅時効中断の事由があります。それが,「催告」です。この催告は,請求などの事由と異なり,完全な消滅時効中断事由ではありません。
催告は,それだけでは消滅時効の中断事由とはなりません。しかし,催告をした後6か月以内に請求など上記の消滅時効中断事由の手続をとれば,消滅時効中断の効果が発生するとされています。
例えば,極端な例ですが,あと1週間で残業代等の消滅時効が完成してしまうという場合に,請求などをする時間はないとしても,とりあえず催告さえしておけば,少なくとも6か月はちゃんとした請求などの消滅時効中断措置をとる猶予が与えられるということです。
この催告は,証拠を残しておくことによって,後に催告したかどうかについての紛争を生じさせないように,配達証明付きの内容証明郵便によって請求書等を郵送しておく方法によって行うのが通常です。










