賃金の支払いについては全額払いが原則とされていますが,賃金をもらう権利(賃金債権)を放棄することは全額払いの原則とどのような関係にあるのでしょうか?ここでは,全額払いの原則と賃金債権の放棄について考えます。
全額払いの原則と賃金債権の放棄
賃金の支払いは,所定期日に所定賃金を全額支払われるのが原則とされています。これを全額払いの原則と呼んでいます。もっとも,一定の例外的な場合には全額を支払わなくてもよいと認められています。
それでは,賃金をもらう権利(賃金債権)をあらかじめ放棄することは,全額払いの原則との関係でどのような意味を持つのでしょうか?
賃金をもらう権利を放棄するということは,所定の賃金を全額もらわないということですから,全額払いの原則に反するようにも思えることから問題となります。
賃金をもらう権利の放棄
この点については,労働者の自由意思に基づく賃金債権の放棄であれば,全額払いの原則に反しないとされています。
もっとも,使用者からの威圧等によって賃金債権の放棄が強いられるということも少なくありません。このような場合に,賃金債権の放棄が許されるとすると,労働者の権利が著しく侵害されてしまいます。
そこで,労働者の自由意思に基づくものであるのか,それとも使用者からの威圧などによってなされたものであるのかという点については,慎重な判断が必要であるとされています。
通常,労働者が自由意思で賃金債権を放棄するということは考えにくいと思われます。したがって,大半の場合は,労働者の自由意思に基づく賃金債権の放棄であると判断されることは少ないでしょう。










